[特集]

横浜町(青森県)が横浜市(神奈川県)に風力14基・32.2MWの再エネ電力を供給開始

― ブロックチェーンを利用した「ENECTION」で産地証明が可能に ―
2019/10/08
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

横浜市:CO2ネットゼロ計画を推進

〔1〕「Zero Carbon Yokohama」

 横浜町は、2年前の2017年から同名(横浜)の自治体でもある神奈川県横浜市との連携を模索していたが、小売電気事業者である、みんな電力の仲立ちもあって、今回の連携を実現させるに至った。

 このような動きと同期して、横浜市は2018年10月に発表した「横浜市地球温暖化対策実行計画」(改定版、表2参照)において、脱炭素化の実現に向けて、2050年までに温室効果ガス(CO2)の排出量をネットゼロにする計画「Zero Carbon Yokohama」を掲げ、地球温暖化対策を強化し、持続可能な大都市モデルの実現に向けた取り組みを開始した。

〔2〕横浜市と東北12市町村の連携協定

 これに続いて横浜市は、2019年2月6日、再エネ資源を豊富にもつ青森県の横浜町や岩手県の久慈市、福島県の会津若松市など東北の12市町村(表4)と、脱炭素社会の実現を目的とした全国で最大規模の「再エネに関する連携協定」を締結した(表5)。

表4 神奈川県横浜市と連携協定を締結した12市町村

表4 神奈川県横浜市と連携協定を締結した12市町村

出所 横浜市記者発表資料「Zero Carbon Yokohama」の実現に向けて平成31(2019)年2月6日

表5 再エネに関する連携協定の対象分野と主な取組内容:3分野の連携

表5 再エネに関する連携協定の対象分野と主な取組内容:3分野の連携

出所 横浜市記者発表資料「Zero Carbon Yokohama」の実現に向けて平成31(2019)年2月6日

 横浜市とこれら東北12市町村は、これまで、再エネを通じて地域循環共生圏注3(図2)の構築を目指し、協議を重ね、今回その第1弾として、青森県横浜町の再エネ電力を、750㎞余も離れた神奈川横浜市へ供給する受給開始式が行われたのである(写真2、受給開始式の様子)。

図2 再エネを活用した都市と地方の地域循環共生圏の新たなモデルの構築

図2 再エネを活用した都市と地方の地域循環共生圏の新たなモデルの構築

出所 横浜市記者発表資料「Zero Carbon Yokohama」の実現に向けて平成31(2019)年2月6日

写真2 横浜町から横浜市への再エネ電力の受給開始式の主な出席者

写真2 横浜町から横浜市への再エネ電力の受給開始式の主な出席者

出所 編集部撮影、氏名は記者会見資料より

 これによって表6に示す、横浜市内の6つの需要家(企業)とその電力使用施設は、横浜町の再エネ電力の使用を開始することとなった。

〔3〕電力の受給だけでなく地域資源も生かした関係に

 挨拶に立った横浜市温暖化対策統括本部長の薬師寺えり子氏は、「私たちの部署は、気候変動対策とSDGsを両輪として取り組んでいます。現在、気候変動問題が大きくクローズアップされ、大都市の果たす役割が重要だと言われていますが、横浜市は、この気候温暖化対策を大都市の義務として取り組んでいるのではなく、横浜市の新しい成長戦略の1つとして位置づけています。市内の企業も、最近は再エネの調達環境を重視する企業が増えています。そのような環境を整えることが、国際都市としての横浜市の競争力を高めることに直結するのです」と述べた。

 さらに「今回、連携協定の第1弾として「ヨコハマ」つながりの横浜町の風力でスタートできることは本当にありがたいことですし、今後、連携協定を結んだ12市町村とは、今回の電力の受給開始を契機に、再エネだけでなく12市町村がもつ多くの地域資源も生かした関係を広げていきたい」と続けた。


▼ 注3
地域循環共生圏:各地域がその特性に応じた地域資源を生かし、自立分散型の社会を形成しつつ、近隣地域と地域資源を補完し支え合うことで、地域を活性化させるための考え方。第五次環境基本計画(2018年4月閣議決定)にて提唱された。

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