横浜町の風力発電の現状と今後の展開
〔1〕横浜町の風力発電の現状
今回の横浜町から横浜市への再エネの供給は、脱炭素化時代の電力供給システムの新しいモデルとして注目されている。現在、横浜町も、全国の多くの自治体と同じように、「少子高齢化や人口減少に続き、財政的にも厳しい状況」が続いている。
このような現状を打開するうえで、
- 比較的安価な土地を大量に保有し、風力や太陽光などの再エネ設備を容易に設置できる地方の市町村と、
- 再エネで発電した電力の需要が増大しているが、設備を設置する土地がない大都市が相互に連携して、
エネルギー問題に取り組むことは、長期的に安定したまちづくりを推進していくうえで、重要な視点となってきた。
現在、「総合戦略」と「再エネ基本計画」のもとに事業化し、推進している、写真3や写真4、表7に示す横浜町雲雀平(ひばりだいら)風力発電所は、順調に稼働している。
写真3 横浜町雲雀平(ひばりだいら)風力発電所の外観
出所 編集部撮影、作成
写真4 横浜町雲雀平風力発電機14基の全体配置図(左が陸奥湾側。右下の黄色い線は2万2000Vの構内送電線)
出所 編集部撮影(横浜町雲雀平風力発電所概要の説明看板より)
〔2〕地方自治体と大都市の連携によって実現する未来の姿
横浜町の野坂町長は、「横浜町は、これを契機に、地場特有の強い風を利用する風力発電を横浜町のエネルギー戦略として更に推進していきます。すでに、2年後の2021年4月の運用開始に向けて、3600kW×12基=43,200kW(43.2MW)の計画を推進しています。風力によるクリーンな「デンキ」を新しい特産物として育成し、次世代のまちおこしとして強力に推進していきます」と締めくくった。
その先に、横浜町の全世帯が「再エネ電力でまかなわれる日」も現実のものとなってきた。さらに、再エネの主力電源化が、地方自治体と大都市の連携によって実現できる未来の姿も見えてきた。
表7 横浜町雲雀平(ひばりだいら)風力発電所の概要
※1 https://www.enercon.de/en/products/ep-2/e-82/
※2 設備利用率:発電設備が「フルに稼働した場合の発電量」に比べて何%の発電量であるのかを示す数値。経済産業省では、例えば陸上風力発電が20%、洋上風力発電が30%などの指標(注:技術の進歩によって変動する)が示されている。この数値が高いほど、その設備を有効利用している(発電量の比率を示す数値が高い)ことになる。これに対して稼働率(%)という用語もあるが、稼働率は、(発電量には関係なく)風が少ない日も風が多い日も、とにかく設備が稼働していた時間を%で示したもの。
出所 各種資料をもとに編集部作成