EV(走る蓄電池)と再エネの連携
前回の東京モーターショーでは、クルマの電動化が加速していくことが各社から発表されていたが、今回の東京モーターショーでは、EVは「走る蓄電池」としての新たな価値があることを、各社が紹介していた。
ここでは、各社EVの最新動向とともに再エネとの関連をレポートする。
〔1〕トヨタ自動車(トヨタ):AI搭載の自動運転EVのコンセプトカー「LQ」
トヨタは、2019年10月11日に発表したAI搭載の自動運転EVのコンセプトカー「LQ」を展示した(写真4)注4。これは、前回の東京モーターショーで出展した「TOYOTA Concept-愛i」を、公道で走行可能にしたモデルだ。
写真4 トヨタAI搭載の自動運転EV「LQ」(左)とトヨタ初の有機ELメーターを採用した運転席(右)
出所 筆者撮影
技術的な特徴は、
- AIエージェント(「YUI」)
- 自動運転(SAEレベル4)
という2つの機能を搭載している点である。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックで公道(東京)において、乗客が乗車する形のデモが予定されている。
「LQ」の自動運転は、技術的にはレベル4相当であるが、実際のデモでは、関係法規や乗客の不安なども含め、レベル2(運転者が同乗する)からスタートする。
なお、AIエージェント「YUI」は、モビリティエキスパートとして乗客ひとりひとりに寄り添い、特別な移動体験を提供することを目的に開発されたAIソフトである。
〔2〕メルセデス・ベンツ:初のEVを発表
メルセデス・ベンツは、同社初のEVである「EQC」(写真5。2019年6月発表)を出展。 EQCの航続距離は400㎞、容量84kWhのリチウムイオン電池を搭載している。EVならではの立ち上がりの加速性能が良く、EVになってもメルセデス・ベンツの安定感や乗り心地はキープされているという。
すでにオンラインでは予約を開始しており、価格は税込で1,200万円。また、会場には、次世代のEVコンセプトカー「EQS」も発表されていたが、航続距離は700㎞を目指す。
写真5 ベンツ初のEV「EQC」(左)と次世代のコンセプトEV「EQS」(右)
出所 筆者撮影
〔3〕日産自動車(日産):次世代EVコンセプトカー2機種を発表
(1)日産リーフは累計43万台を販売
EVの先駆者である日産は、「日産リーフ」の初代モデルを2010年に発売して以来、世界で累計43万台以上の販売を達成している。
最新の「日産リーフe+」は、航続距離を458km(WLTCモード)まで向上させ、優れたエネルギー効率とさらなる高出力、高トルクを実現した新開発のe-パワートレインを採用している。また、大容量バッテリーに貯めた電気を、専用機器を介して、さまざまな電気製品の電源としても活用ができる。
停電時の非常用電源としてだけでなく、太陽光発電の電力固定価格買取制度の満了(卒FIT)を迎えた、家庭でのエネルギー自家消費にも対応できる蓄電池として、その価値を提供している。
(2)次世代のEV:日産「ARIYA」と「IMk」を出展
10月23日に世界初公開された日産「ARIYA」(アリア コンセプト)は、日産のビジョン「ニッサン インテリジェント モビリティ」の新たな象徴となる、EVのクロスオーバーコンセプトカーである(写真6)。新開発の専用プラットフォームに加え、前後輪にモーターを配した、3モーター4輪駆動システムを採用している。
写真6 日産の次世代EVコンセプトカー「ARIYA(左)」と「IMk(右)」
出所 筆者撮影
高次元の発進・パワフルな加速性能を実現するとともに、最先端の運転支援システム「プロパイロット2.0」も採用した。
また、10月1日に世界初公開された「ニッサン IMk」は、2020年代の「ニッサン インテリジェェント モビリティ」が目指す将来を体現する、EVのコンセプトカーである。軽自動車規格というコンパクトな新時代の小型EVであり、最新の運転支援技術やシームレスなコネクテッド機能を搭載している。
〔4〕本田技研工業(ホンダ):初の都市型EV「Honda e」を発表
(1)カーボンフリー社会の実現へ
「すべての人に、“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する」ことを掲げたホンダブースでは、「電動化」と「エネルギー」をキーワードに、多彩な内容が紹介されていた。
同社ではMaaS注5とエネルギーサービスを組み合わせた「Honda eMaaS」として、移動と暮らしをシームレスにつなぐことで新たな価値を提供し、カーボンフリー社会の実現に貢献するとしている。
ブースでは、ホンダ独自の高効率電動化技術「Honda e:TECHNOLOGY」を駆使した電動スクーター「BENLY e:」や、EVの「Honda e」などの製品コーナーに加え、二輪・四輪コネクテッドサービスが展示されていた。さらに、「Honda SENSING」をはじめとする、事故ゼロ社会の実現に向けたさまざまな技術や取り組みを紹介するコンテンツなど、ホンダの先進技術を通じた生活体験ができる展示となっていた。
(2)ホンダ初の都市型EV「Honda e」の基本仕様
ホンダが日本初めて発表したEV「Honda e」(写真7)についてレポートしよう。
写真7 電気自動車「Honda e」の外観と大画面の液晶パネルや充電用プラグ
出所 筆者撮影
▼ 注4
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/30063094.html
▼ 注5
MaaS:Mobility as a Service、サービスとしての移動。ICTを活用して交通をクラウド化し、人の移動を最適化するためのコンセプト。さまざまな移動手段(公共交通かどうか関係なく)を活用し、利用者の利便性を高める。