[COP25に見る脱炭素社会への警告]

COP25に見る脱炭素社会への警告 ≪前編≫

― 深刻な地球温暖化:気候変動から気候危機へ ―
2020/02/06
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2020年1月から、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」(2015年に合意)は実施段階に入ったが、それを目前にして、2019年12月2日〜15日の14日間、スペイン・マドリードで国連気候変動会議「COP25」が開催された(表1)。
COP25には、世界196カ国・地域から、各国の代表や国際機関、企業、自治体などの非国家アクター、次世代の若者など、総計2万2,354名が参加し(表2)、前回のCOP24で積み残された、パリ協定実施ルールの詳細事項の決定や、国別の温室効果ガス削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)の引き上げなどについて議論された。
特集≪前編≫では、COP25全体の概要とともにCOP25でのスピーチを中心に、深刻な地球温暖化の現状を見ていく。

表1 COP25の正式名称と全体のプロフィール

表1 COP25の正式名称と全体のプロフィール

UNFCCC:国連気候変動枠組条約。1992年採択、1994年発効。日本は1993年に締結
※当初COP25は、議長国であるチリの首都サンティアゴで開催が予定されていたが、交通機関の運賃引き上げに対する大規模な反政府デモによって、会場の安全確保が難しいところから急遽スペインに変更された。
出所 http://www.env.go.jp/earth/copcmpcma.html

表2 COP25への参加組織数と参加人数(UNFCCC:2019年12月13日発表)

表2 COP25への参加組織数と参加人数(UNFCCC:2019年12月13日発表)

出所 UNFCC「Conference of the Parties Twenty-fifth session, Madrid, 2?13 December 2019、 https://unfccc.int/sites/default/files/resource/cp_inf4.pdf
https://unfccc.int/resource/docs/2015/cop21/eng/misc02p01.pdf

明日ではなく、今すぐに行動を

 COP25(図1、写真1)は、議長国であるチリの環境大臣カロライナ・シュミット(Ms. Carolina Schmidt)議長(写真2右)のもとで開会された。

写真1 COP25の開幕:会場運営を支えるスタッフ・ボランティアへの歓迎風景(スペイン・マドリード:2019年12月2日)

写真1 COP25の開幕:会場運営を支えるスタッフ・ボランティアへの歓迎風景(スペイン・マドリード:2019年12月2日)

出所 Welcome to staff and volunteers at COP 25 by UNclimatechange

図1 スペイン・マドリードで開催されたCOP25の開催案内

図1 スペイン・マドリードで開催されたCOP25の開催案内

議長国チリ(CHILE)から、急遽スペインのマドリード(MADRID)に場所を変更してCOP25が開催されたことがわかる。
出所 https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/35864/

 当初、COP25は、議長国であるチリの首都サンティアゴで開催が予定されていたが、交通機関の運賃引き上げに対する大規模な反政府デモによって、会場の安全確保が難しいところから急遽スペインに変更された。

〔1〕国連事務総長「希望の道か、降伏の道か」

 2019年12月2日のCOP25開会式において、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏(写真2中央)の挨拶は、次のような内容であった。

「私たちは、危険な地球温暖化を抑えるための取り組みで、重大な岐路に立っています。

そのうちの1つは、降伏の道です。この場合、私たちは知らず知らずのうちに、後戻りできない地点を通過し、地球上のあらゆるものの健康と安全を脅かすことになります。私たちは本当に、目と耳をふさぎ、地球が燃えている間に何もしなかった世代として、記憶に残りたいのでしょうか。

もう1つは、希望の道です。それは決意と、持続可能な解決策の道でもあります。この道を進めば、さらに多くの化石燃料は本来あるべき場所、すなわち地中に留まり、私たちは2050年に、カーボンニュートラル注1の実現に向けて歩を進めることになります。

今世紀末までに、地球の平均気温上昇を1.5℃という必要な水準に抑えるためには、この道を進むしかありません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告(1.5℃特別報告書)にもあるとおり、現時点で最新の科学的知見によると、温暖化がそれ以上に進めば、私たちは壊滅的な災害に襲われることになるでしょう。

若者をはじめ、全世界で何百万もの人々が、あらゆる部門のリーダーに対し、私たちが直面する気候緊急事態にもっと、そしてはるかに真剣に取り組むよう呼びかけています。

明日ではなく、今すぐに正しい道を進むことが必要だとわかっているからです。それはつまり、今こそ重要な決定を下さねばならないということです。

COP25はそのための機会なのです。」

〔出所 COP25開会式におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長の挨拶(マドリード、2019年12月2日)より


▼ 注1
カーボンニュートラル(Carbon Neutral):直訳すると炭素中立。企業の事業活動や国民の日常生活などから排出される二酸化炭素と、植物等で吸収される二酸化炭素の量を同じ量にする(すなわち、±0にする)こと。これによって二酸化炭素の排出量を実質的にゼロにするという考え方。

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