2020年度のVPP実証事業の分類・経緯とVPP事業の内容
最終年度である2020年度のVPP事業は、2019年度までの実証内容の流れを踏襲しながら、図6の右側に示すように、A事業(VPP基盤整備事業)、B事業(VPPアグリゲーション事業)、C事業(リソース導入促進事業)に取り組む。
図6 VPP実証事業の分類の経緯と2020年度のVPP事業
出所 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/009_09_00.pdf
https://sii.or.jp/vpp02/uploads/R2VPP_kouboyouryou.pdfをもとに編集部作成
各事業内容については、表3を参照していただきたい。
表3 2020年度の事業分類表(A事業、B事業、C事業)
2019年度のVPP構築実証事業の全体的な成果
これまで、2020年度のVPP構築実証事業の全体像を見てきた。ここでは、2019年度の実証事業の成果を見てみよう。
表4は、2020年3月にSIIから発表された、2019年度のVPP構築実証事業成果報告の公開版である。
表4 平成31(2019)年度「需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金」(VPP)成果報告【公開版】、2020年3月
東京電力PG:東京電力パワーグリッド、東京電力HD:東京電力ホールディングス
注:共同事業者数は2019年5月30時点の採択結果の総数。その後、増減あり
出所 SIIの各種資料をもとに編集部で作成
2つのA事業者、7つのB-1事業者、4つのB-2事業者の成果報告となっているが、C事業者の報告はB-1、B-2事業者の成果報告の中に包含されている。
成果報告の内容は膨大であるため、ここでは、「2019年度 V2Gアグリゲーター事業(B-2事業)『東北電力V2G実証プロジェクト』」の成果報告を簡単に紹介する。
2019年度VPP構築実証事業のシステム全体の構成
図7は、2019年度VPP構築実証事業でA事業のVPP基盤整備事業を担当する、早稲田大学 スマート社会技術融合研究機構 先進グリッド技術研究所が構築した「VPP構築実証事業のシステム全体の構成」である。
図7 2019年度VPP構築実証事業のシステム全体の構成
OpenADR 2.0b:OpenADRアライアンス(2010年設立)が策定したデマンドレスポンス(DR、電力の需要家側応答)を実現するための通信プロトコル。OpenADR 2.0ではインテリジェントサーモスタットなど比較的単純な機器の制御を目的とするプロファイルA(OpenADR 2.0a)が2012年8月に、アグリゲーターなどによる本格的なADRサービスを目的とするプロファイルB(OpenADR 2.0b)が2013年7月に公表された。OpenADR 2.0bはOpenADR 2.0aを包含する、より高機能な仕様となっている。
出所 https://sii.or.jp/vpp31/uploads/A_1_waseda.pdf
図7は、VPPが一般送配電事業者の調整力として活用されていくための基礎を提供するために、需給調整市場を見据えて設定され、共通実証メニューの要件を取り込んだVPP共通基盤システムである。
ここでは、模擬的に早稲田大学が一般送配電事業者となり、B-1事業者、B-2事業者に、国際標準のOpenADR 2.0bという通信プロトコルを使用して、調整力に関するデマンドレスポンス信号(DR指令)を送り、指令の内容を伝えている。
OpenADR 2.0bでは、節電要請(DR指令)を行う側(例:一般送配電事業者)をVTN(Virtual Top Node)、節電要請を受ける側はVEN(Virtual End Node)と呼び、VTNとVENが通信することによって、B-1事業者7事業者と接続を希望するB-2事業者に対して、DR指令などのイベント通知およびその実績収集が行われた。