写真1 コロナ禍で開催された[関西]スマートエネルギーWeek 2020の会場入り口の風景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の中で開催された[関西]スマートエネルギーWeek 2020。体温測定や消毒、マスク配布のほか、医務室も設けられ、医師、看護師が常駐して待機するなど、徹底したコロナ対策の下に実施された。
出所 https://www.wsew.jp/ja-jp/about/sokuho-osaka.html
関西電力送配電:4つの戦略領域で新ビジネスを展開
〔1〕新規事業に「4つの戦略領域」を設定
2020年4月1日から、再エネ事業者などが送配電網をより中立的かつ公平に利用できるよう、発送電の法的分離が実施された。これに伴って、関西電力から一般送配電事業を継承して誕生した、関西電力送配電株式会社注2は、新規事業において、次のような4つの戦略領域を設定し、多彩な展示を行った。
- 既存アセット(資産)活用化領域(電柱の位置情報、スマートメーター情報の活用等)
- 社会インフラデザイン領域(防災・防犯事業等)
- 電動モビリティ利活用領域(ドローン技術によるインフラの保守点検、電柱に設置したセンサーを活用した自動運転プラットフォームの構築等)
- 環境適応・構造転換領域(VPP等における蓄電池を活用した周波数調整(後述するNECとの共同実証参照)、ブロックチェーンを使用した電力量の売買)
写真2 関西電力送配電株式会社の展示ブース
出所 編集部撮影
〔2〕電柱位置情報データの販売
上記4つの戦略領域のうち、「電柱位置情報データの販売」の例を見てみよう。
現在、日本には全国に約3,600万本(2018年時点。日本のシンボルである「桜の木」とほぼ同数)の電柱が設置され、これまで家屋の新築や太陽光の系統連系の申込みに対応するなど、年間7万本ペースで増え続けてきた注3。
しかし、現在、国際的な動向や地震等の災害対策、安全・円滑な交通の確保、良好な景観の形成をはじめ東京オリンピック・パラリンピック関連エリアなども含めて、全国的に電線を地下に埋設する「無電柱化」の計画が推進されている注4。
一方、既存の電柱を有効活用し、新ビジネスを展開する動きも活発化している。
電柱には、図1に示すようにそれぞれ番号札が付けられている。例えば事故や火災、病気などの発生で、警察や消防署に通報するとき、自分の現在の所在地を伝えるのが難しい場合に、この電柱の番号札の番号を伝えれば、救急車や消防車は、(電柱の番号札のデータを所有しているので)その電柱を目標にして、容易に事故現場等に向かうことが可能となる。
図1 電柱の番号札の意味
電柱番号札には電力会社用とNTT用の2種類がある。関西電力送配電エリアでは、左の写真のように設置され、右に示すように「漢字(東、西、南、北)」や「アルファベット(E、W、S、N)」で記載されている。なお、写真下の「R5と文字」で記載されている番号札は、NTTの電柱(正しくは「電信柱」)の番号札である(両方の番号札が付いている電柱は「共用柱」と呼ばれる。
出所 関西電力送配電「電力設備の位置情報データ販売」より
関西電力送配電は、全国の電柱の位置情報データを販売している(図2)。例えば、販売価格は、大阪市の場合は170万円程度、奈良市の場合は60万円程度だ。また、北海道から沖縄まで他の9社(旧電力会社)の電柱位置情報データも、代理店として販売している。
図2 電柱の位置情報データ販売の仕組み
出所 関西電力送配電の配布資料より
提供されるデータのファイル形式はCSV(Comma Separated Value)、提供媒体はCDまたはDVDである。
▼ 注1
https://www.wsew.jp/ja-jp/about/previous.html#osaka
▼ 注2
関西電力送配電は、送電・変電・配電・給電・電力小売託送サービス等を提供する。送電線の全長は1万8,804km、配電線の全長は13万2,662
km、変電所数(配電塔除く)は914カ所の事業規模となっている。
▼ 注3、注4
国土交通省、「無電柱化の推進に関する取組状況」令和2(2020)年6月、27ページ(注3)、8ページ(注4)