図1 主要国のエネルギー自給率とその変遷
※2011年から日本の自給率が20%から急速に悪化(一時期6%まで悪化)しているのは2011年に発生した3.11東日本大震災の影響。
エネルギー自給率:生活や経済活動に必要な一次エネルギー(例えば石油や石炭、天然ガス、ウラン、太陽光、水力、風力等の再エネ)のうち、自国内で確保でき利用している比率
出所 資源エネルギー庁、「グラフで見る世界のエネルギーと「3E+S」安定供給①〜各国の自給率のいま」
脆弱な日本のエネルギーセキュリティ
新型コロナ禍が、日本のエネルギーセキュリティの脆弱さに警鐘を鳴らしている。
日本のエネルギー自給率はわずか9.6%で、OECD注1加盟35カ国中、34位という低さだからである(図1)。
このように、国の根幹である一次エネルギーの多くを輸入に頼っている日本の現状は、今回の新型コロナパンデミックのような事態で国交が一時中断されたり、あるいは輸入先と何らかの問題が発生したりした場合に、エネルギーの確保が困難になるからである。
このような現状を打破するためにも、VPPの導入を促進し、エネルギー自給率を向上していくことが重要となる。
2020年度のVPP構築実証事業の全体像
本誌2020年5月号では、「VPP実証事業:2019年度の成果と2020年の展望」と題して、VPP構築実証事業の最新動向を紹介した注2。その後、環境共創イニシアチブ(SII)注3は、公募審査の結果、2020年度の同事業への採択事業者(A事業者、B事業者)および補助金交付の決定内容を発表した(表1。表2には本記事で登場するキーワードを解説)。
表1 2020年度の需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金交付決定の内容
EVPS:Electric Vehicle Power Station、EVパワーステーション。充電スタンドともいわれる。EV/PHEV(電動車)向けの充電機能だけでなく、EV/PHEVの蓄電池が貯めている電気を住宅に供給する機能(V2H:Vehicle to Home)等も備えている。EVPSサーバは、これを管理する。
出所 https://sii.or.jp/vpp02/uploads/R2VPP_kouboyouryou.pdf等をベースに編集部で作成
表2 記事中に登場するキーワード解説
出所 各種資料をもとに編集部で作成
表1に示すように、2020年度は総額50億円の予算が組まれ、次の2つの実証事業を推進することになった。
- 2016年度から5カ年計画で推進し、最終年度を迎えるVPP構築実証事業
- 2021年4月に開設される需給調整市場をにらみ、2020年度からスタートする新規のダイナミックプライシング(時間別料金、後述)による電動車(EV/PHEV)注4の充電シフト実証事業注5
▼ 注2
https://sgforum.impress.co.jp/article/5204
▼ 注3
SII:Sustainable open Innovation Initiative、一般社団法人環境共創イニシアチブ。平成23(2011)年2月22日に設立された、VPP構築実証事業補助金の執行なども行う。電気事業連合会、石油連盟、日本ガス協会、みずほ銀行、野村総合研究所、電通など18団体・企業で構成。所在地は東京都中央区銀座。
▼ 注4
電動車(EV/PHEV):日本ではEV(Electric Vehicle、電気自動車)と呼ぶケースが多い。本誌では、①電気をエネルギー源として、電動機(モーター)で走行する電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)と、②電気と化石燃料(ガソリン等)の両方をエネルギー源として、モーターとエンジンを使い分けて走行するプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)を含めて、電動車あるいはEV/PHEVと表現する。
▼ 注5
EV/PHEVの充電時間をずらしてピーク時間をシフトする実証事業。総額50億円の中には2020〜2022年度のうちの初年度分が含まれる。