新型コロナウイルスによるネットワーク利用の変化
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が世界的な大流行(パンデミック)となり、日本政府は2020年4月7日に7都府県に対して緊急事態宣言を発出し、同月16日には対象地域を全国に拡大した。緊急事態宣言後、多くの人が在宅勤務となり、これまで対面で行われていた会議や研修なども、オンライン会議ツールなどを使用して、自宅から参加する形式に移り変わっている。また、学校の休校に伴うオンライン学習支援ツールや、外出自粛要請に伴うオンライン動画配信サービスなどの利用も進んでいる。
これによって影響を受けているのがネットワークのトラフィックだ。例えばNTT東日本は、トラフィックが大きく増加していることを公表している。
具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が出る前の、2020年2月25日の週と比較した東日本全域における平日の昼間帯(9〜17時)のトラフィック総量は、緊急事態宣言発出があった4月6日週で最大33%増加注3、5月7日週で最大59%増加注4している(図1)。
図1 NTT東日本全エリアにおけるネットワークトラフィックの変化
総務省が「Beyond 5G推進戦略(骨子)案」を公表
総務省は、5Gの次の世代であるBeyond 5G(6G)の円滑な導入と国際競争力の向上に向けた総合戦略を策定する取り組みとして「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催することを2020年1月21日に発表しているが注5、同懇談会は、日本中が新型コロナ対応に起因するネットワークトラフィックの増大に見舞われている4月8日に、「Beyond 5G推進戦略(骨子)案」注6を公表した。
骨子案の冒頭ではCOVID-19に触れられており、国民生活と経済活動を円滑に維持するためのICTインフラの必要性が強調されている。その上で、この推進戦略では、Beyond 5Gに関する研究開発を進め、2025年頃には要素技術を確立し、2030年頃にはBeyond 5Gのサービスインへつなげるという目標を掲げている。
図2に、Beyond 5Gに求められる技術の概要を、図3に、Beyond 5Gによって2030年代に期待される社会像のイメージを示す。
図2 Beyond 5G(6G)に求められる中核技術
図3 2030年代に期待されるBeyond 5G(6G)による社会像
出所 総務省Beyond 5G推進戦略懇談会(第2回、WEB会議による開催)「Beyond 5G推進戦略(骨子)案<概要>」、2020年4月8日
▼ 注1
ITU-T:International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector
▼ 注2
「Network 2030」は、固定網に関する次世代ネットワーク技術(光ネットワーク)としてITU-Tで検討が進められているものである。現在、ネットワーク全体は10年後の2030年頃を見据えて、固定網と移動体網の融合が進むと予測されている。このため、「Network 2030」の新技術は6Gに適用される可能性もある。6Gについては3GPPで技術仕様が検討される予定である。なお、「Beyond 5G」とは「5Gの高度化」という意味であり、5Gに続く次世代モバイル「6G」を指す用語である。