[特別レポート]

エリクソンモビリティレポートで読み解く5Gの現状(2.2億契約)と今後の進展

― 活発化する「フル仕様の5Gシステム」の導入 ―
2021/01/10
(日)
フリーライター 狐塚 淳/インプレスSmartGridニューズレター編集部

エリクソンが年2回発行している「モビリティレポート」の最新版(全36ページ)が、2020年11月に発表された(注1)。同レポートでは、毎回定点観測的にアップデートされる「方式別モバイル加入推移と予測」など、5G普及に向けた世界の通信状況を紹介するとともに、モバイル通信の注目トピックス(①FirstNet、②グローバル企業のネットワーク強化、③クラウドゲーム、④通信事業者の3つの戦略)も紹介されている。
ここでは、2020年12月17日に開催された、エリクソン・ジャパン CTOの藤岡 雅宣(ふじおか まさのぶ)氏によるオンラインメディアブリーフィングをレポートする。

2026年の5G契約数は35億に!4G開始時を上回る普及の伸び

一般的なモバイル通信市場の動向は、世界のモバイル契約数は2020年に79億で、2026年には88億と予測される(図1)。このうち、5G契約は2020年末には2億2千万だが、2026年には35億に達し、全加入契約の約40%を占めると予想されている。一方、LTE契約のピークは2021年で48億、2026年には39億と、5Gの契約数に迫られる。

図1 方式別の世界のモバイル加入推移と予測

図1 方式別の世界のモバイル加入推移と予測

出所 エリクソン・ジャパン 藤岡 雅宣氏、2020年12月17日オンラインメディアブリーフィング「エリクソンモビリティレポート2020年11月」資料を一部加筆・修正

「5Gの加入数の上昇率は、4G登場時を上回る勢いで増加しています。2026年には全世界モバイル加入の40%、モバイルブロードバンドの90%に達するでしょう」と、エリクソン・ジャパンの藤岡氏は説明する。

地域別で見た場合、2026年には北米では80%、西欧で68%、北東アジアでも66%が5G契約になり、LTEの契約数を抜きさっている。

5Gの進展を後押しするサービスの進展とトラフィック増加

〔1〕5GによるFWAの急増

2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急増した影響で、家庭内で使用する無線として、5Gはモバイル(移動)通信向けよりも、FWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセスシステム)としての利用が急増(図2左図)し、提供する事業者も2倍になった。世界の通信事業者の64%がFWAを提供している計算だ。

図2 FWA接続数とトラフィックの増加

図2 FWA接続数とトラフィックの増加

出所 エリクソン・ジャパン 藤岡 雅宣氏、2020年12月17日オンラインメディアブリーフィング「エリクソンモビリティレポート2020年11月」資料を一部加筆・修正

5GによるFWAは、xDSL注2より高速なこともあり、地域別で見ると西欧で93%、北米で80%の事業者が提供しているが、アジアでは光回線も充実しているため、提供する事業者は50%以下になる。

5GによるFWA接続の比率が高くなると、これに比例してFWAのトラフィックも増加していくと予想される。図2右は全トラフィック(FWA+モバイルの通信量)を示したものである。

図2右に示すように、2020年はFWAのトラフィックは数%であるが、2026年には全トラフィックの25%程度になると予測されている。

こうしたサービス提供の増加に呼応して、すでに150以上の5G対応デバイスが市場に投入されている。2020年後半からは、5Gのフル仕様である5G SA注3化も増加し、キャリアアグリゲーション注4もSA化の進展に従って増加していく。同様にローバンド(低周波数帯)のFDD注5を使うデバイスの数も増加していくだろう。

〔2〕普及する4Gの音声VoLTE

4Gの音声VoLTE(LTE回線を使用した音声通信)も伸びており、日本ではほとんど使用されている。VoLTEは、世界中のさまざまな地域で220以上のネットワークで提供され、加入数も2020年末には30億以上となり、2026年には69億以上となるだろう。

トラフィック量については、2020年の第3四半期には日本では前年の20%増にとどまったが、全世界では50%増になった。レポートでは、2026年にはトラフィック量は現在の4倍になり、5Gがその54%を占めると予測している。

〔3〕モバイルデータ使用量:世界平均は9.4GB

モバイルデータ使用量を地域別に見ると、以前からインドが多かったが、これは固定回線が弱いせいでもあった。その他の地域も世界的に増加しており、2026年には、北米ではユーザー1人あたり毎月50GBを使用、西欧、アジアもそれに続く形で増加している。世界の平均は9.4GBであるが、日本は、現在ではまだ7〜8GBと少ない。

また、データトラフィックの66%は動画が占めているが、今後5Gの普及に伴い、さらに動画コンテンツやXR(VR、AR、MR、SRの総称)などが充実し、2026年には77%に伸長するだろう。

〔4〕セルラーIoT/セルラーLPWA

セルラーIoT注6については、2026年には、2020年の17億から59億への増加が予測されている(図3)。

図3 セルラーIoT接続の増加

図3 セルラーIoT接続の増加

出所 エリクソン・ジャパン 藤岡 雅宣氏、2020年12月17日オンラインメディアブリーフィング「エリクソンモビリティレポート2020年11月」より

「4G/5G接続のブロードバンドIoT(高速IoT)やクリティカルIoT(企業向けIoT)など(図3の濃い紫色)の新分野が増加してくるが、NB-IoT/Cat-M(LTE-M)などの図3の赤字で示すセルラーLPWA注7(図3のやや薄い紫色)も大幅に伸びていく。5Gについては、今後ミッションクリティカルな分野での利用も増えてくるだろう」と藤岡氏は語る。

〔5〕5Gの低遅延性:産業系のユースケースはこれから

5Gの特長の1つである低遅延性については、ゲームなどコンシューマ系への利用は出てきているが、まだ産業系のユースケースは厳しい。しかし、例えば重機の遠隔制御に画像情報だけでなく、今後は、振動などの情報を使用することで、制御の精度を上げるといった利用も考えられる。

また、低遅延性を利用することで、工場や車、ロボットなどの協調動作を実現していくことも可能になる。

LTEネットワークは世界で795展開されているが、半分近い324は高度化したLTE-Advanced(LTEを発展させた通信規格)となっており、グローバルでは、41のギガビットLTEネットワークが展開されている。


▼ 注1
原題:Ericsson Mobility Report November 2020

▼ 注2
xDSL:DSLはDigital Subscriber Line(デジタル加入者線)の略で、アナログの電話回線を使用して高速なデータ通信を行う方式。ADSL、VDSL、SDSL、HDSL等いくつかの方式があるので、総称してxDSLと呼ばれる。商用インターネットサービスが開始された初期に、インターネットの常時接続サービスとして広く利用された。

▼ 注3
SA:Stand Alone、スタンドアロン。LTEの拡張型(NSA:Non- Stand Alone)ではない5Gネットワーク構成。フル仕様の5Gシステムともいわれる。

▼ 注4
キャリアアグリケーション:Carrier Aggregation。複数の異なる周波数帯の電波を束ね、1つの回線としてデータの送受信を行う技術。高速で安定した通信が可能になる。

▼ 注5
FDD:Frequency Division Duplex、周波数分割複信方式。モバイル通信で、送信と受信にそれぞれ別々の周波数を割り当て、双方向通信(全二重通信)を行う通信技術。

▼ 注6
セルラーIoT:携帯キャリアのセルラーネットワーク(4Gや5G等)を用いた低消費電力、広域の無線通信規格。

▼ 注7
LPWA:Low Power Wide Area、低消費電力型・広域無線通信網。セルラーLPWAとして、NB-IoTやCat-M(LTE-M)等が普及している。

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