2030年までのエネルギー需要とその変化
〔1〕世界のGDP成長率予測
図1は、COVID-19の影響を受けた、世界のGDP成長率とエネルギー需要を示している。
図1 2030年までのGDP年平均成長率とエネルギー需要
図1の左側「GDP年平均成長率」のグラフを見てわかるとおり、2030年までのGDP成長率は、「公表政策シナリオ(STEPS)」でも「回復遅延シナリオ(DRS)」でも、World Energy Outlookの2019年予測と比較して大幅に下がっている。
この影響を与えているのは、COVID-19による行動制限である。IEAが2020年6月に公開(7月に改訂版を公開)した特別レポート『Sustainable Recovery』(持続可能な回復)では、6月頃までの世界におけるCOVID-19対応による人々の行動制限の状況は、図2のとおりだったと紹介している。
図2 世界における行動制限施策の影響を受けた割合
これを見ると、2020年3月半ばから6月にかけて、世界におけるほとんどの人が何かしらの行動制限を受けていたことがわかる。また、その後もCOVID-19の勢いはとどまることはなく、本稿執筆時点(2020年12月)でも、日本をはじめ世界各国で感染者数は増え続けており、各国がさまざまな対応を強いられている。
〔2〕エネルギー需要予測
そのような中では、エネルギーの利用も大きく変わってくる。
図1の右側「エネルギー需要」のグラフを見ると、2019年時点ではWorld Energy Outlook 2019年予測のとおり、今後もエネルギー需要が伸び続け、2030年には2019年比で12%増になると想定されていた。しかし、COVID-19で人々の行動が大幅に制限されたことによって、例えば「公表政策シナリオ」では、エネルギー需要が2019年時点にまで回復するのが2023年であり、2030年時点での伸び率は9%と想定されている。
さらに、COVID-19の影響が長引くという想定の「回復遅延シナリオ」では、2019年水準にまで回復するのは2025年頃、2030年の時点での伸び率は4%と想定されている。
なお、このような2030年に向けてのエネルギー需要の増加に貢献しているのは、インドをはじめとする新興国だと想定されており、先進国の需要は減少していくと想定されている。