ボッシュのBitC(バッテリークラウド)
〔1〕「BitC」が果たす役割
ボッシュは、前述した課題に対応するため、新しくクラウド・バッテリー・サービス「BitC」を提供し、EVの中で最も高価なコンポーネントである「蓄電池」の性能劣化の改善(電池寿命の向上)や、充電プロセスの最適化などのサービスを提供している。
さらに同社は、EV蓄電池の二次利用についても、積極的に対応し始めている。
〔2〕「BitC」サービスの全体像
図3に、蓄電池の性能や寿命などを向上させる、ボッシュのBitCサービスアーキテクチャの全体像を示す。
図3 ボッシュのBitC(Battery in the Cloud)サービスのアーキテクチャ
SoH:State of Health、蓄電池の健全性(蓄電池の状態)
SDK:Software Development Kit、ソフトウェア開発キット
VDE:ドイツの中立的な認証機関「VDEインスティテュート」による独立した製品等の検査と認証。
出所 カロリン・ライシャート(ロバート・ボッシュ)、「自動車の電動化が創り出す新しい価値」、Energy Storage Summit Japan 2020(2020年12月8日)を日本語化して作成
次に、図3に示す①〜⑥のサービス内容を簡単に見ていく。
① EVに搭載された蓄電池に関する各種データを、前処理するためSDK(ソフトウェア開発キット)を使用して、EV内の蓄電池から収集する。具体的には、SDKの蓄電池管理システムあるいは遠隔制御ユニットを使用して、蓄電池からのデータを収集し分析する。
② 収集されたデータは、ボッシュのモビリティクラウド(Bosch Mobility Cloud Suite)内にある、「デジタルバッテリーツイン」(Digital Battery Twin、クラウド上に仮想的に作られたリアルと同じ蓄電池)に送られる。
③ データを受信したボッシュのモビリティクラウドでは、ボッシュが開発したアルゴリズム(データの分析方法)を使って、蓄電池の寿命や充電率などをシミュレーションして予測する。これは、各EV(蓄電池)がもつ特定の仕様に合わせて、柔軟に予測が可能となっている。このクラウドで、蓄電池がもつキーファクター(蓄電池の寿命や充電率など)が最適化される。
④ ③で最適化された情報は、EVに送られ(フィードバックされ)、EVはこの情報に基づいて、蓄電池の充電プロセスを管理する。これは、運転者にはわからない形で行うことができる(スマホでのチェックは可能)。
⑤ ボッシュでは、蓄電池に関する寿命時間などの情報をリモート監視し、何か問題が発生した場合に検出し、対応できるようになっている。
⑥ 最後に、ボッシュはVDE(ドイツの中立的な認証機関)と共同して、蓄電池の健全性(SoH)や充電率などについて、現状の使用状態についての認証を出すことが可能となっている。
表2に、ボッシュのBitCサービスの概要をまとめて示す。
表2 BitCの4つの主要なサービスモジュール
SoH:State of Health、蓄電池の健全性(蓄電池の状態)
出所 カロリン・ライシャート(ボッシュ)、「自動車の電動化が創り出す新しい価値」、Energy Storage Summit Japan 2020(2020年12月8日)をもとに編集部で作成
表2に示すように、BitCサービスは、次の4つの主要なサービスモジュールで構成されている。
- 蓄電池寿命監視と異常検出モジュール
- 劣化予測モジュール
- 蓄電池寿命の最適化モジュール
- 使用状態の認証モジュール
このうち、特にVDEからの認証情報は、中古のEVを販売する場合や、蓄電池を二次利用する場合に、重要な情報となる。