ロバート・ボッシュ:自動車の電動化が創り出す新しい価値
ボッシュのクラウド・バッテリー(BitC)サービス
ドイツのロバート・ボッシュ(Robert Bosch GmbH、以下ボッシュ)のEモビリティソリューション コネクテッドモビリティソリューションズ部門 担当副社長のカロリン・ライシャート(Carolin Reichert)氏注5は、「自動車の電動化が創り出す新しい価値」と題して講演した。
ライシャート氏は、「現在、モビリティ注6は日々進化を続け、ボッシュはモビリティの明日を創り出している。ここで紹介するボッシュのクラウド・バッテリー(BitC:Battery in the Cloud)サービス注7は、図1に示すように、EVの蓄電池をクラウドに接続し、EVの性能と寿命を大幅に向上させるサービスです」と述べ、従来の個別のEVに組み込まれている蓄電池管理システムを補完する「クラウド・バッテリー」と、それによって生み出される新たな価値について紹介した。
図1 ボッシュの「変化・発展するクラウドベースのモビリティの未来」:キーワードはパーソナライズ、自動化、コネクテッド、電動化
出所 カロリン・ライシャート(ロバート・ボッシュ)、「自動車の電動化が創り出す新しい価値」、Energy Storage Summit Japan 2020(2020年12月8日)を日本語化して作成
市場におけるEVシェアの増大と代表的な3つの保証
〔1〕EVは2030年に30%のシェアへ
EVは、脱炭素化の面からも自動車産業にとっても、ますますその重要性を高めている。図2に示すように、2020年以降EVは急速に普及し、2030年にはEVの市場シェアは、中国市場が50%、欧州市場が40%、全世界では30%に達すると予測されている。
図2 主要市場におけるEVシェアの予測
出所 カロリン・ライシャート(ロバート・ボッシュ)、「自動車の電動化が創り出す新しい価値」、Energy Storage Summit Japan 2020(2020年12月8日)を日本語化して作成
〔2〕EVにおける3つの保証
EVを普及させるための課題として、EVの走行距離や蓄電池の寿命/充電率などを保証(Warranty)することが重要な課題となってきている。例えば、その基準として次のような3つの保証がある。
- 購入したEVが16万kmの走行距離が可能であること
- 蓄電池は8年間(リチウムイオン蓄電池の平均寿命)使用できること
- 蓄電池の充電率は少なくとも70%注8を維持できること
一部の自動車メーカーは80%の維持を謳っているところもあるが、蓄電池の課題としては、このほか、蓄電池の健全性(SoH:State of Health)をはじめ、充電間隔の最適化などの課題もある。
EVの普及には、これらの課題を解決していく必要があるが、同様なことが保険会社にとっても重要な課題となっている。現在、具体的なEV専用の保険はない。その理由は、EVの蓄電池がどれくらいの頻度で問題を起こすのかなどが、まだ明確になっていない(不透明な)ところがあるからだ。
▼ 注5
Ms. Carolin Reichert:Vice President, Bosch Connected Mobility Solutions, E Mobility
▼ 注6
モビリティ(Mobility):移動性、稼働性。自動車に関連してモビリティという場合、電動車(EV、HV、PHEV、FCV)や自動運転車、コネクテッドカーを含めた新しい自動車産業全体のことを指すことも多い。
▼ 注8
充電率70%:初期の蓄電池の満充電容量を100%とした場合、その後、蓄電池の性能が劣化しても、満充電の容量が70%を維持すること。