[特別レポート]

脱炭素で世界の先頭を走る欧州の最新エネルギー戦略

― EUタクソノミーを基準に2050年ゼロエミッションを推進 ―
2021/02/01
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

7分野の「EUタクソノミー」と電源構成

〔1〕EUタクソノミーは投資のガイドライン

 欧州グリーンディールを推進するための重要な点は、2020年6月に表3に示す「EUタクソノミー」(EU Taxonomy、EUの分類)を発表したことである。EUタクソノミーは、グリーンリストともいわれ、EU全体が持続的な経済活動を推進していくための、投資のガイドラインでもある。

表3 持続的な経済活動を規定した「EUタクソノミー」(2020年3月)

表3 持続的な経済活動を規定した「EUタクソノミー」(2020年3月)

EUタクソノミー:タクソノミー(Taxonomy)とは分類あるいは分類法のこと。EUタクソノミーとは、EUが2020年6月に採択した世界初の“グリーンリスト”(7つに分類した上表のリスト)であり、持続可能な経済活動を分類するシステムである。これによる規制が、欧州グリーンディールを推進する。
出所 自然エネルギー財団、「脱炭素で先頭を走る欧州=2050年ゼロエミッションの戦略と技術」、メディア・セミナー資料、2020年12月15日

 表3に示すように、EUタクソノミーは、「農林」「建築」「電力、ガス、蒸気、空調(エネルギー)」「情報通信技術」など、7つの分野に分類されている。

 石田氏は、「特に表3に示す‘電力、ガス、蒸気、空調’のエネルギー分野では、再エネはもちろんのことですが、CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)注3を組み合わせた火力発電については、一定以下のCO2排出量であれば認められています。ただし、原子力発電については、現状では、EUタクソノミーには入っていません。その理由は、放射性廃棄物による潜在的な環境負荷がある限り、持続可能といえるのかという議論もあり、保留になっているからです。現状では、EUで原子力に依存しているのは主にフランスですが、EU全体としては、原子力に極力頼らない脱炭素化が進められいます。このため、今後、このEUタクソノミーに基づくと、原子力への新規投資は相当限定されると思われます」と述べた。

〔2〕EUにおける電源構成の実績と予測

 図2に、EUにおける電源構成の実績と2050年の目標(脱炭素シナリオ)を示す。

図2 EUにおける電源構成の実績と目標(脱炭素シナリオ、欧州委員会による)

図2 EUにおける電源構成の実績と目標(脱炭素シナリオ、欧州委員会による)

※電力セクターにおける2030年の中間目標は設定していない。
出所 自然エネルギー財団、「脱炭素で先頭を走る欧州=2050年ゼロエミッションの戦略と技術」、メディア・セミナー資料、2020年12月15日

 この脱炭素シナリオによれば、2050年には、EUにおける自然エネルギー(再エネ)の合計は電源構成の80%以上(81~85%)となり、そのうち風力と太陽光発電が、現在の約30%程度から65~72%へと大幅に伸びる。一方、多くはフランスで稼働している原子力発電は12~15%で、火力発電(化石燃料)は2~6%と、かなり比率が下がり、主力電源から後退している。

「先ほどCCSを使用すれば、火力もEUタクソノミーに入ると申し上げましたが、これだけ火力の比率が低くなると、果たして高いコストをかけてCCSを導入する意味があるのだろうかと、EU内で疑問視されています」(石田氏)。


▼ 注3
CCS:Carbon Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留技術。石炭火力発電所等から発生する、CO2濃度の高い排ガスからCO2を回収し、地中や海中に貯留する技術。

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