世界で拡大する企業のRE100への加盟とコーポレートPPA
RE100とは、企業の事業運営に必要な電力を100%、再生可能エネルギー(以下、再エネ)で賄うことを目標とする国際的なイニシアチブで、全世界で428社が加盟している(2024年3月現在)注3。そのうち、日本企業は製造業を中心に流通、金融、建設、不動産、情報通信などの各業界で全85社が加盟し、再エネ100%に向けた取り組みを展開している(2024年3月現在)注4。
そのRE100を進めるための手段として、ここ数年で注目され世界で拡大しているのがコーポレートPPAだ。これは、企業が特定の再エネの発電設備、特に新規の再エネの発電設備から長期(15年~25年程度)で電力を購入する契約で、図1に示すように、北米や南米を中心に世界的に増加している。アジア・太平洋地域でもコーポレートPPAは増加しており、日本でも2021年から増大している。
例えば最近の話題として、図2に示すように、JR西日本が中国電力と契約して、新幹線用の使用電力としてコーポレートPPAを利用し、2027年度末までに同社で運行する列車運転用電力の全体の約10%を再エネ化することを発表している(再エネ電力の供給対象場所は岡山県、広島県、山口県の新幹線用変電所)注5。
図1 世界各国で拡大するコーポレートPPA
[出典]BloombergNEF(日本語訳は自然エネルギー財団)
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日
図2 JR西日本における「国内初の新幹線への再エネ由来電力導入」のイメージ
出所 JR西日本、「国内初、新幹線への再生可能エネルギー由来電力導入」、2023年6月19日
コーポレートPPAの導入効果
企業がコーポレートPPAを導入する効果として、石田氏は次の3点を挙げた。
(1)脱炭素:企業は再エネ電力を利用して CO2排出量を削減する必要がある。コーポレート PPAで再エネ電力を長期に調達できる。
(2)経済性:日本でも太陽光や風力の発電コストが低下する一方、火力発電や原子力発電の発電コストが上昇している。コーポレートPPAでは、電力の購入コストを抑制できる。
(3)追加性:コーポレートPPAは新しい再エネの発電設備と契約するが、この再エネ発電設備の追加によって、既設の火力発電と代替できる。その分、電力システム全体のCO2排出量を削減でき、その結果、気候変動を抑制する効果がある。
世界各国の企業がコーポレートPPAを積極的に導入している大きな理由は、(3)追加性にある。この追加性にはいくつかの考え方があるが、現在、国際的に主流になっているのは、次の2点。
(1)新設の再エネ発電設備による電力・証書(自家発電やコーポレートPPAを含む)
(2)運転開始から15年以内の再エネ発電設備による電力・証書注6
石田氏は、「RE100イニシアチブでは、2024年1月以降に加盟する企業が使用する再エネ電力については、上記の2つの追加性のいずれかを満たすことが求められます」と、今後の導入にあたって注意を促した。
注1:自然エネルギー財団新春セミナー「自然エネルギー3倍化の展望COP28決定を受けて」、2024年1月17日
注2:PPA:Power Purchase Agreement、電力販売契約。需要家と発電事業者の間で長期間の電力買取契約を結ぶこと。新規の再エネ発電所の開発を進めることを「コーポレートPPA」と呼ぶ。
注3:https://www.there100.org/re100-members
注4:https://japan-clp.jp/climate/reoh
注5:西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)、「国内初、新幹線への再生可能エネルギー由来電力導入」、2023年6月19日
注6:再エネ発電設備の投資回収期間は平均15年程度である。投資回収が済んでいない発電設備から電力・証書を購入することによって、発電事業者の投資回収を支援して、新たな開発プロジェクトを促す効果がある。