[クローズアップ]

RE100加盟53社、「2030年に再エネ比率50%」を求む!

― JCLPと連携して日本政府に再エネ拡大の公開書簡を送付 ―
2021/04/11
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

RE100企業からのメッセージ

〔1〕リコーのメッセージ

 2017年4月に、日本企業として初めてRE200に加盟したリコーは、RE100への加盟以降、さまざまな気候変動関連のイニシアティブに参加してきた。特に2020年3月には、CO2排出目標を大幅に見直すことで、SBTイニシアティブ注8による「1.5℃目標」認定を取得するなど、その取り組みを加速させてきた。そして、2021年3月には、2030年目標を大幅に引き上げた(図3)。

図3 リコー:リコーグループの環境目標

図3 リコー:リコーグループの環境目標

スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3 : スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html
出所 リコー、「脱炭素社会の実現に向けたリコーの取り組み」、2021年3月24日

 リコーのサステナビリティ推進本部社会環境室 ESG推進グループリーダー 羽田野 洋充氏は、「私自身は、昨年から、RE100アドバイザリーコミッティのメンバーとして、RE100の運営側の議論にもかかわってきました。すでに再エネ100%を達成している企業もありますし、欧米の加盟企業では、再エネ100%の目標年を2030年とする企業も多くあります」と述べた。

 続けて「しかし、日本企業、およびアジアで事業展開している欧米企業からは、アジア市場では、再エネ調達へのハードルの高さが、RE100の達成を難しくするのではないか。再エネの調達が難しい市場に対しては、RE100として、何らかのメッセージを発信すべきではないかという議論があり、今回の書簡送付に至ったと認識しています」と書簡の送付に至った経緯を述べた。

 リコーは、直近の取り組みとして、2030年までに主要拠点はすべて再エネ100%を目指すこと、国内では質の良い再エネを調達するために、トレーサビリティも含め、独自の再エネ電力総合評価制度の導入に取り組む。最後に羽田野氏は、「政府には、再エネ電力の供給拡大につながる政策の推進を期待しています」と語った。

〔2〕イケア・ジャパンのメッセージ

 家具・インテリアなどを扱うイケアは、「より快適な毎日をより多くの方々に」というビジョンを掲げて事業展開をしている。

 イケアの温室効果ガスの総排出量は、全世界の排出量の0.1%に相当しており、その気候変動対策に取り組むことが、ビジネスの持続的な成長を可能にする大きな機会と捉えている。

「今回、インカグループ(Ingka Group、イケア・ジャパンの親会社)が、RE100レター(書簡)に署名をしたのは、日本の再エネ比率を2030年までに引き上げることで、地球の気温上昇を1.5℃にとどめることができると信じているからです」と、イケア・ジャパン カントリーサステナビリティ マネージャーの平山 絵梨氏は語った。

 イケア・ジャパンは約5,500kWの太陽光パネルを購入し、かつ電力会社から再エネの不足分を調達することで、2018年に、同社の大型店舗において、再エネ100%を達成できた。

 現在、イケア渋谷店(2020年11月オープン)やイケア新宿店(2021年春にオープン予定)でも、再エネが利用できるようにビルのオーナーと相談しているが、「日本の現状では、再エネ不足と価格の高さが障壁となっていることを実感しています」と平山氏は語る。

 また、イケアでは、顧客への配送サービスを100%ゼロ・エミッションで行う目標を掲げ(図4)、車両の調達に向けて多くの企業を検討しているが、平山氏は、「EVトラックににしても燃料電池自動車にしても、再エネで充電できなければ、100%ゼロ・エミッションの配送とはいえません」という。

図4 イケア:2025年までに温室効果ガスを排出しない配送サービスを100%提供

図4 イケア:2025年までに温室効果ガスを排出しない配送サービスを100%提供

出所 イケア、「より快適な毎日をより多くの方々に」、2021年3月24日

 さらに、イケアでは、日系企業を含む、世界中の約1,000社のサプライヤーに対して、100%再エネにシフトすることによって、温室効果ガスを2030年までに80%(2016年対比の絶対値)削減するよう求めている。

〔3〕アサヒグループホールディングスのメッセージ

 2020年10月にRE100加盟したアサヒグループホールディングス(以下、アサヒグループ)は、「アサヒスーパードライ」をはじとした国内酒類事業や国内飲料事業、国内食品事業、国際事業を展開している。

「今回、当社がRE100書簡に署名したのは、2030年に再エネ比率の目標を50%に引き上げることによって、日本が世界をリードする環境先進国を目指すことに期待しているためです」と、同社のサステナビリティ マネジャー 原田 優作氏は書簡への期待を述べた。

 同社のアサヒスーパードライは、グリーン電力を日本で一番活用している商品だという。そのため、缶には小さく『グリーンエネルギーマーク』を付けて、再エネ普及に貢献していることをアピールしている。

 しかし、日本では、グリーン電力証書にかかるコストは、一般的に海外に比べて約10倍〜30倍ほど高いといわれている。

「今後、グリーン電力証書を利用する事業者が増えてきたときに、導入しやすい環境を整備することによって、クリーンな社会を実現できるようにしたい」と原田氏は語る。

 アサヒグループのバリューチェーン全体で再エネを活用し、温室効果ガスの排出量をゼロにしていく目標を掲げているが、RE100を目指すには、使用電力を100%再エネにする必要がある。

 そのため原田氏は同社の使用燃料についても、「燃料の再エネ化というと、一見電力と関係ないと受け取られる方もいると思いますが、当社としては非常に重要なポイントなのです」と、その重要性について述べた。

「図5の左側の円グラフは、当社の国内事業の消費電力の割合を示しています。60%は購入電力ですが、残りの40%は自家発電による電力です。自家発電は燃料を使って発電するので、燃料部分を、例えばグリーン水素やCO2フリーのメタンなどへ転換することが期待されています」(原田氏)。

図5 アサヒグループホールディングス:脱炭素に向けた再エネ目標引上げの重要性

図5 アサヒグループホールディングス:脱炭素に向けた再エネ目標引上げの重要性

出所 アサヒグループホールディングス、「RE100企業からのメッセージ」、2021年3月24日

 さらに原田氏は、「現在、工場では、都市ガスなどを燃料として電気を発電し、同時に蒸気も生成するコジェネシステムを利用しているため、燃料の脱炭素化を図るか、コジェネシステムを引き続き継続してしていくかどうか、悩ましい課題となっています」と、現状の課題にも触れた。

 国内酒類事業や国内飲料事業などの業界の100%再エネ化を牽引していく、アサヒグループの取り組みに、期待が寄せられている。


▼ 注8
SBTイニシアティブ:WWF(World Wide Fund for Nature、世界自然保護基金)や、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブ。企業に対して、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進している。

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