世界における5G商用サービスの展開データ
〔1〕5G商用サービスの開始および投資状況の推移
ここまで国ごとの動向として5G商用サービスの展開状況を見てきたが、以降はGSA(Global mobile Supplier Association、グローバルモバイルサプライヤー協会)が2020年12月に発表したレポート注14と2021年3月に発表したレポート注15をもとに、具体的な数字を確認していく(図6)。
図6 世界における四半期毎の5G商用サービスの開始および投資状況の推移
〔2〕世界132カ国で428社が5Gサービスへ投資
GSAのレポートによると、2021年3月までに世界132カ国で428社の通信事業者が5Gサービスに関する投資を行っている。ここでいう「投資」の中には、試験や実証実験、商用サービスの開始準備、そして実際に商用サービスの提供のすべてを含んでいる。なお、この5Gに投資を行っている通信事業者のうち、すでに68社がSA(Standalone、スタンドアロン)方式に関する投資を行っている。
この投資をしている428社のうち、153社が3GPPの仕様に沿った5G商用サービスを展開している。ここでいう5G商用サービスとは、モバイルによる提供とFWAの両方を含んでいる。
図7に見られるように、5Gの商用サービスが増えてきたことによって、5Gに対応する端末の数も増えていることがわかる。
図7 世界における5G対応端末の数
〔3〕873種の5G対応端末が発表
図7のデータは、GSAが2021年7月に発表したレポート注16によるものだが、2021年6月時点で、メーカーなどから発表された5G対応端末は873種にのぼる。このうちの約64%に相当する557端末がすでに販売中となっている。
図8は、発表済みの873種の端末を、種類別に分類したものである。
図8 発表済み5G対応端末の種類別内訳
図9 固定無線アクセス(FWA)サービスを提供する世界の通信事業者の数
出所 『エリクソンモビリティレポート』(2021年6月)を一部加筆修正して作成
〔4〕携帯電話233種に次ぐFWA機器
873種のうち、もっとも数が多いのが携帯電話であり、約半数の431種を占めている。次いで多いのがFWA用の顧客側設置機器(CPE:Customer Premises Equipment)であり、全体の約20%(18.1%)ほどを占めている。
また、全体の3.7%を占めるその他の中に含まれるものは、ドローンやヘッドマウントディスプレイ、テレビや自動販売機などさまざまな端末や機器である。
図8の中でも、携帯電話に次ぐ数が出ているFWAは、COVID-19の拡大以降、特に注目されているサービスである。
2021年6月に公開された最新の「エリクソンモビリティレポート2021年6月」注17では、FWAを次のように定義している。
無線広域モバイルネットワーク対応の宅内機器(CPE)を介してブロードバンドへの主要アクセス手段を提供する接続形態であり、屋内用(卓上型、窓据え付け型)や屋外用(屋根および壁据え付け型)などの様々な形態のCPEが用いられます。ポータブル充電式のWi-Fiルータやドングルは含まれせまん。
COVID-19の拡大で、世界中で多くの人が在宅勤務やオンライン授業の参加、ロックダウン中のさまざまなオンラインサービスの利用などにより、自宅でのインターネット利用機会が増えたため、家庭での高速なブロードバンド利用のニーズが高まったことに対応するために、最近になってFWAのニーズが高まっている。
〔5〕今後も増大するFWA市場
エリクソンが行った調査結果によると、世界の通信事業者のうちFWAを提供する事業者は、2018年12月の調査時点では103社だったものが、2019年8月には141社、2020年2月20日には185社、2020年10月20日には200社、そして2021年4月には224社となり、2018年12月時点と比較すると2倍以上となっている(図9)。
この伸びは今後も続くことが予想されている。同じく『エリクソンモビリティレポート』(2021年6月)によると、今後もFWAの接続数は増え続けると考えられている(図10)。
図10 FWA(固定無線アクセス)接続数
出所 『エリクソンモビリティレポート』(2021年6月)を一部加筆修正して作成
〔6〕2026年の5GのFWA接続数は1億8,000万件
図10によれば、世界における2020年末のFWAの接続数は6,000万件を超え、その後も伸びが続き、2026年には3倍の1億8,000万件以上になると予測されている。このうち、7000万件以上が5GによるFWA接続となり、全体の約40%を占めると考えられている。
このようにFWAが成長していくことについて『エリクソンモビリティレポート』(2021年6月)では、次の3つの要因を指摘している。
- ブロードバンド接続の継続的な需要
- DSL(デジタル加入者線)やケーブル、光ファイバなどの有線による固定サービスと比較した場合のコスト効率の良さ
- 政府によるブロードバンド導入推進のための助成金等の各種施策
このような要因から、今後、中東やアフリカといったブロードバンド接続の提供が限定的な地域においては、FWAが果たす役割は特に大きくなっていくと考えられている。
▼ 注14
LTE & 5G Market Statistics - December 2020 ? GSA
▼ 注15
LTE 5G Market Statistics - March 2021 ? GSA