[特別レポート]

世界の5G市場の最新動向

― 本格化する「5G SA」の商用サービスと高まる「FWA」へのニーズ ―
2021/08/01
(日)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

5Gサービスの今後の予測

〔1〕2026年には5Gの加入契約数は35億件へ

 それでは、FWAも含めたモバイルの加入契約状況は、今後どうなっていくと予想されているのだろうか。方式ごとのモバイル加入契約数については、次のように予測されている(図11)。

図11 無線方式(世代)ごとのモバイル加入契約数の推移

図11 無線方式(世代)ごとのモバイル加入契約数の推移

出所 『エリクソンモビリティレポート』(2021年6月、エリクソン・ジャパン)を一部加筆修正して作成、
(参考)https://www.ericsson.com/49f353/assets/local/about-ericsson/company-facts/wordwide/japan/doc/20216.pdf

 エリクソンによると、2021年の第1四半期には約2億9,000万件に達した世界における5G加入契約者数は、2021年末には5億8,000万件近くに達すると予測している。このペースはエリクソンが当初予想していたよりも早いもので、4Gより2年早く10億件に達すると予測している。

 この理由としては、中国の契約数の増加が想定以上であることを指摘している。中国では、国家的な戦略や通信事業者間の競争、そして手頃な価格の5G対応スマートフォンが発売されていることで、順調に契約数が増えていると分析している。

 今後、中国や北米などで5Gの導入が進み、2026年には5Gの加入契約数は35億件になると見込まれている。

〔2〕3段階で進む5Gの今後の展開

 5Gの今後の展開について、GSMAは、レポート“ The Mobile Economy 2020 ”注18において、次の3段階で進むと予想している。

  1. 初期展開期間(2018〜2020年):米国や中国、日本、韓国が先鞭をつける
  2. 上昇期間(2021〜2023年):欧州や中東・北アフリカ地域で投資が進む
  3. 普及期間(2023年以降):ラテンアメリカやCIS注19 、アフリカの一部の地域で導入が進む

〔3〕根づよいLTE(4G)が主流の無線方式の維持

 5Gに大きな注目が集まっているものの、図11で示された2026年までの範囲では、世界においてLTE(4G)が主流の無線方式を維持し続けると考えられている。LTE(4G)の加入契約者数は2021年第1四半期には46億件を超えたが、2021年には48億件でピークに達するとエリクソンは予測している。そこから5Gへの移行が進み、2026年末にLTE(4G)は約39億件になると予測している。

 今後しばらくは、COVID-19感染症の拡大が続いていくことが想定されている。そのような状況では、テレワークやリモート会議などが増加し、ますます5Gをはじめとするモバイルネットワークの重要性が高まっていくことが予想される。


▼ 注18
https://www.gsma.com/mobileeconomy/wp-content/uploads/2020/03/GSMA_MobileEconomy2020_Global.pdf

▼ 注19
CIS:Commonwealth of Independent States(独立国家共同体)を意味し、加盟国としてはアゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ、モルドバ、ロシア、準加盟国としてトルクメニスタンを含む。
出所 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/europe/ca_kiko/index.html

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