[特集:特別対談]

カーボンニュートラルを目指す社会インフラとしてのデータセンターとは?

― DXを推進し、GXへの新しい流れを加速 ―
2021/10/04
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

カーボンニュートラルなデータセンターの成長に大きな期待

Hiroshi Esaki

〔1〕2050年カーボンニュートラル宣言で、データセンターはどう変わるべきか

藤原:国策として、エネルギー基本計画(案)で、2030年温室効果ガス(CO2)排出量削減46%、2050年カーボンニュートラルという脱炭素への動きがあります。

 この分野について、実はアグレッシブな調査結果が出ています。

 市場動向調査を提供しているグローバルインフォメーションの調査レポート注7によれば、カーボンニュートラル・データセンター市場は年平均成長率が22.17%で、2020年の34億6,000万米ドルから2025年には94億2,000万米ドルになると予測されています。

江崎:この驚異的な成長率は、肌感覚としてありますね。

藤原:はい。非常に注目されている市場ですね。この数値を牽引している中心は、ハイパースケールデータセンター注8です。GAFA注9の影響が大きいです。海外の主なデータセンター事業者のCO2排出量削減への取り組みを表2にまとめました。

表2 海外のデータセンター事業者の温室効果ガス(CO2)削減等への対応例(アルファベット順)

表2 海外のデータセンター事業者の温室効果ガス(CO2)削減等への対応例(アルファベット順)

※1 SBT:Science Based Targets。企業が科学的根拠に基づいて設定する、温室効果ガス(CO2)排出削減目標のこと。
※2 企業などのCO2排出量を把握するために、世界共通基準「GHGプロトコル」が規定しているCO2の算定範囲。スコープ1は企業(自社)の燃料の燃焼や工業プロセスによる直接的な排出量を指す。スコープ2は企業が他社から購入した電気や熱・蒸気の使用に伴う間接的な排出量を指す。スコープ3はスコープ1・2以外の間接的な排出量を指し、自社が販売した製品使用や廃棄も含めたもの。
※3 カーボンネガティブ:事業活動の中で排出する温室効果ガス(CO2)量よりも吸収する温室効果ガスの量の方が多い状態をいう。
※4 PUE:Power Usage Effectiveness、電力使用効率のこと。データセンターなどIT関連施設におけるエネルギー効率を測定する指標の1つ。PUE=DC全体の電力量/IT機器利用の電力量。
出所 各種資料をもとに作成

 また、国内の主な通信事業者とIT企業の脱炭素対策についても表3に示します。

表3 国内の主な通信事業者およびIT企業の脱炭素対策(五十音順)

表3 国内の主な通信事業者およびIT企業の脱炭素対策(五十音順)

※1 企業などのCO2排出量を把握するために、世界共通基準「GHGプロトコル」が規定しているCO2の算定範囲。スコープ1は企業(自社)の燃料の燃焼や工業プロセスによる直接的な排出量を指す。スコープ2は企業が他社から購入した電気や熱・蒸気の使用に伴う間接的な排出量を指す。スコープ3はスコープ1・2以外の間接的な排出量を指し、自社が販売した製品使用や廃棄も含めたもの。
※2 SBT:Science Based Targets。企業が科学的根拠に基づいて設定する、温室効果ガス(CO2)排出削減目標のこと。
※3 販売したエネルギー供給製品・サービス。  ※4 販売したエネルギー消費製品・サービス。
出所 各種資料をもとに作成

〔2〕ESGとRE100への投資コスト

江崎:グリーン証書などを利用して使用する電力には色はついていませんので、直接に再エネを用いなくても電力会社の送配電網から電力を供給してもらっても、再エネ由来の電力を利用しているという証明が可能です。このようにして再エネ由来の電力を利用する際には、10%程度の付加的なコストが発生することになります。

 ここからは私の考えなのですが、それでも再エネを購入すれば、カーボンニュートラルな企業としての価値が高まりますので、その結果株価が10%ぐらい上がれば、すぐに採算がとれるのではないかと思うのです。

藤原:おっしゃる通りですね。ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)投資ガイドでは、機関投資家は環境保護に熱心な企業の株を購入すべきという義務のようなものがあって、機関投資家は再エネを利用する動きに反応します。

江崎:経営者がRE100への投資が自社の株価に関係すると理解できれば、そのコストは大したことはないと思うかもしれません。企業からすれば、高コストでも再エネを導入したデータセンターを使ったほうがいい、という話になります。

藤原:その通りです。それは企業のセールスポイントになります。


▼ 注7
2021年4月28日発売の『カーボンニュートラルデータセンターの世界市場:市場予測 (データセンタータイプ・ソリューション・エンドユーザー産業・地域別)・政府プログラム・各種動向・市場機会の分析』(BIS Research Inc.)

▼ 注8
ハイパースケールデータセンター:サーバ室面積5,000m2以上かつ電力供給量が6kVA/ラック以上で、テナントがクラウドサービス事業者であるような事業者データセンター。

▼ 注9
GAFA:世界的に強い影響をもつIT企業、Google、Amazon、Facebook、Appleの4社の頭文字をつないだ造語。

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