グループ年間売上げ5兆円超、うち環境関連は約1,400億円
大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス工業)は、本業以外に脱炭素化を目指す環境エネルギー事業本部を設置し、各種取り組みを行っている注1。
同社は住宅、賃貸住宅、流通店舗、建築、マンション、環境エネルギーの6事業を展開、2023年度のグループ年間売上高は5兆2,029億円に達し、住宅・建設・不動産業界で第1位となっている。
その中で環境エネルギー事業の売上げは1,394億円で、今後2026年に1,700(営業利益120)億円、2029年には同2,200億円(同170)億円に成長させたいとしている。
オフサイトPPA事業を柱に、今後の成長を見込む
環境エネルギー事業本部の主なビジネスモデルは、①エネルギー施設の設計・調達・建設を行う「EPC」、②電力小売りの「PPS」、③再生可能エネルギー(以下、再エネ)発電の「IPP」の3分野(図1)注2。同社の本業である住宅・建設事業とのシナジー効果(相乗効果)も期待している。
図2に示す、それぞれの成長シナリオについて見ていく。
図1 環境エネルギー事業本部の事業内容
出所 大和ハウス工業株式会社、「2024年度環境エネルギー事業計画説明会」資料、2024年11月27日
図2 ビジネスモデル別の成長イメージ
出所 大和ハウス工業株式会社、「2024年度環境エネルギー事業計画説明会」資料、2024年11月27日
EPC事業:エネルギー施設の設計・調達・建設分野
現在、再エネ導入の手法として、需要地から離れた場所(オフサイト)に太陽光などの発電施設を開発し電力を利用するオフサイトPPA注3の導入が増えている。EPCはその発電施設の建設を主力事業としており、今後もその拡大を目指す。事業開始は2022年、2026年度には累計で600MWの開発を目標としている(図3)。
ちなみにオフサイトPPAでは、発電地から需要地への送電に系統(電力会社の送配電網)の利用が必要で、そのために電力会社に系統接続の申請を行う。同社から電力会社への申し込みが2024年9月末の累計で1,045MW、それに対する承認が703MWとなっており、すでに目標である600MWを超えている。
同社では全国に拠点をもち、そこから得られる精細な土地情報をもとに発電用地を確保し、事業を拡大してきた。
大和ハウス 常務執行役員 環境エネルギー事業本部長の能村 盛隆氏は、「オフサイトPPAのニーズの高まりもあり、業績は今後も順調に推移するだろう」と語る。
図3 オフサイトPPA事業計画
出所 大和ハウス工業株式会社、「2024年度環境エネルギー事業計画説明会」資料、2024年11月27日
PPS事業:電力小売り分野
この分野は2014年から事業展開中で、2024年度の売上げは前年比マイナスとなったが、収益性は大きく改善した(図4)。その理由として、電力販売価格の逆ざや(調達価格が販売価格を上回ること)の解消を挙げている。ロシアのウクライナ侵攻で2022年に資源価格が高騰し、その影響で電力販売価格に逆ざやが発生していた。該当する顧客に対して契約内容やメニューの見直しを進め、利益改善を図った。また、電力卸売り市場が安定したこともプラス要因となった。
ちなみにPPSの顧客は、低圧電力注4は同社の賃貸住宅向けが約44万4,000件、住宅向けが約1万500件、法人が約3,300件。高圧電力注5は法人3,300件。今後、同社の主力事業である賃貸住宅や住宅の建設が増えることで、PPSの顧客も増加が見込める。
図4 PPS分野、売上、粗利、利益率、総販売電力量の推移
出所 大和ハウス工業株式会社、「2024年度環境エネルギー事業計画説明会」資料、2024年11月27日
IPP事業:再エネ発電分野
現在、グループ全体で730MWの再エネ発電所が稼働している(図5)。この中にはオフサイトPPAによる発電も含まれており、前述のようにEPCでその事業拡大が進めば、IPPの業績向上にもつながる。同社では早期に1,000MW(1GW)の稼働を目指す。その発電量は原発1基分に相当する。
図5 大和ハウスグループ運営の発電サイト
出所 大和ハウス工業株式会社、「2024年度環境エネルギー事業計画説明会」資料、2024年11月27日
注1:大和ハウス工業株式会社 常務執行役員 環境エネルギー事業本部長 能村 盛隆(のうむら もりたか)氏による事業計画説明会(2024年11月27日)。
注2:EPC:Engineering, Procurement and Construction、再エネ発電所を設計・調達・建設する事業のこと。
PPS:Power Producer and Supplier、特定規模電気事業者。電気小売事業者(新電力ともいわれる)。
IPP:Independent Power Producer、独立系発電事業者。自社で発電設備をもち、売電する事業者。
注3:PPA:Power Purchase Agreement、電力販売契約
注4:低圧電力:交流600ボルト以下、直流750ボルト以下の電力。
注5:高圧電力:交流600〜7,000ボルト以下、直流750〜7,000ボルト以下の電力。