「Volter40」は日本全国で40台余が導入へ
編集部 ところで「Volter40」は、日本でどのくらい設置されているのでしょうか?
写真2 北秋田市綴子(つづれこ)にある「道の駅 たかのす」の外観
「たかのす」には、約700年の歴史をもつ世界一の「綴子大太鼓」を展示した博物館「大太鼓の館」もある。
出所 編集部撮影
〔1〕Volter40の総合効率は78%!
沼 まず、Volter40の特徴を簡単に説明します。表2に示すように、Volter40は、発電向けには「最大出力40kW」、熱供給向けには「最大出力100kW」という2つの機能を同時に備えているところから、「バイオマス熱電併給設備」(別名:コジェネレーションシステム、略称:コジェネ)と呼ばれています。
また、Volter40は、図3に示すように、電気エネルギーの場合は22%の効率を、熱エネルギーの場合は56%の効率をもっていて、総合効率は78%と、とても高いエネルギー効率を実現しています。
図3 高いエネルギー効率を実現する「Volter40」の仕組み
出所 ボルター秋田の資料より
当社は関与していませんが、ボルター秋田注5さんは、「Volter40」を日本の1号機として北秋田市の「道の駅 たかのす」に導入し、2017年6月から運用を開始しました(写真2、写真3)。発電した電気は、FIT制度によって東北電力に売電(40円/kWh)を開始する一方で、発生した熱(温水)は観光資源の1つである「足湯」(あしゆ)に利用しています。
写真3 「道の駅 たかのす」の駐車場のコンテナに収容・設置された「Volter40」(中央)と木質チップ(左)および秋田すぎを使った足湯(右)
出所 ボルター秋田の資料および編集部撮影
〔2〕全国で40台以上のVolter40が稼働へ
沼 「道の駅 たかのす」へVolter40が導入される前の2015年に当社は、当時、木質バイオマス発電事業を展開していた秋田市の向浜(むかいはま)に本社を置く、ユナイテッドリニューアブルエナジー(URE)に、ユナイテッド計画株式会社らと共同出資して、地産地消型の木質バイオマス発電所を開発し、2016年に比較的大型のバイオマス発電所(最大出力:2万500kW)を稼働させていました。
そのような経験を通して、日本のバイオマス発電市場の動向を分析する機会をもつことができましたが、その結果、小規模で熱電併給(コジェネ)型のバイオマス発電所へのニーズが高まってきていることがわかりました。そこで、小型で性能がよく、しかも全国展開ができるバイオマス発電技術を探したところ、北欧フィンランド製の「Volter40」に出会えたのです。
その時点で、すでにビジネス展開していた秋田県信用組合さんが支援するボルター秋田による、Volter40の日本での導入台数は20台ほどでした。
編集部 その後の展開はどうだったのでしょうか。
沼 ボルター秋田と弊社との二人三脚でVolter40を秋田以外で全国販売し、それらの運用・保守のビジネスを展開してきましたが、現時点では、日本国内にはすでに30台ほど導入されています。
さらに最近では、島根県津和野町からVolder40を12台(総電気出力:480kW=40kW×12台)、図4)の大量受注をしました(2022年6月稼働予定)。これに伴い、フォレストエナジー100%出資の「津和野フォレストエナジー合同会社」を設立し、2021年7月から発電所の着工を開始しました(図4下段の出所URL参照)。
図4 島根県津和野町における「Volter40」×12台のバイオマス発電計画
※フォレストエナジーが100%出資。
出所 https://forestenergy.jp/2021/07/13/tsuwano/
これら建設中のものを含めますと、現在約40台(電気出力40kW×40台=1,600kW=1.6MW)以上のVolter40が導入されている状況です。
▼ 注5
ボルター秋田:2016年にボルタージャパン(本社:北秋田市)として設立され、2018年11月にその商号をボルター秋田株式会社に変更された。