世界でも先端を行くオーストリアのバイオマス関連技術
オーストリア(正式名称:オーストリア共和国)は、ドイツ、スイス、イタリアの隣りに位置し(図1)、首都ウィーンは、北緯でいうと、ほぼ北海道の稚内と同じである。人口は約843万人(2013年)、面積は約8万3,900㎡で、日本の約1/5、北海道より少し大きい。地形は大きくアルプス山脈、パンノニア低地の一部、ウィーン盆地、ボヘミア高地に分けられ、図2のようにバイオマス発電所が数多く(計436箇所)存在している。
世界で最も進んでいると言われるオーストリアのバイオマス関連技術は、木質バイオマス関連の展示会「Energiespamesse」(省エネルギー展:2015年2月17日〜3月1日、出展者数880社、来場者数9万8,600名)の規模の大きさからも伺える。
図1 オーストリア・ウィーン(Wien)とギュッシング(Güssing)の位置関係
図2 オーストリア国内のバイオマス発電所の分布図
〔出所 http://tkm.sebe2013.eu/index.php/Transnational_Economic_and_Logistical_Environment、http://tkm.sebe2013.eu/index.php/File:TEF_5-12.JPG〕
同展示会は、全体で大きく産業用木質バイオマス関連、一般住宅用木質バイオマス関連、産業用木質バイオマス関連、住宅省エネ設備機器関連に分かれ、この中で産業用木質バイオマス関連の展示内容は、主に次の3つに分かれている。
(1)チップ関連:木材の粉砕機〔チッパー(Chipper)〕
チッパーとは、森林において、トラクターの駆動装置を接続したり独自のエンジンでチップを作る機器(写真1)のことである。小型のものから超大型まであり、多くの企業で製品化され、その価格は日本円にして10万円程度〜数千万円までさまざまである。
写真1 ヘルツ(Herz)社注3のチッパー
(2)ボイラー
- 家庭用ボイラーとストーブオーストリアでは家庭暖房に関して、木材を燃料に温水や蒸気を供給するもの、木材を燃焼し直接熱を得るものの展示が多い。日本でも北海道などでは家庭用ボイラーや地域配管供給暖房が行われている。
- 産業用ボイラー
主に、地域暖房や産業用熱供給の目的で使われるボイラーである。各社が実機を展示。スナッパー(Spanner)社やヘルツ(Herz)社などの大手企業も多いが、ほとんど日本に輸入されていない。
(3)その他関連機器
チッパーやボイラーの刃や部品関連の機器の展示が多いが、そのほか、コンテナ式のバイオマス発電装置格納機器など展示されていた。
これはチップのサイロ(格納場所)や木材粉砕機(チッパー)、ボイラーなどを総長40フィート(約12メートル)の大きさのコンテナに収めてしまう仕組みである。木材供給所からの移動も可能になるため、用地制限も緩和される。これは、現在日本でも普及しているコンテナ式データセンターのバイオマス発電所版ともいえる。
▼ 注1
チップ:木材を機械で小さく切り刻んだもの。
▼ 注2
「グッシング」とも発音される。
▼ 注3
ヘルツ(Herz)社:正式名はHERZ Armaturen社(オーストリア)。1896年に設立(創業118年)。従業員は単独1,700名(連結3,000名)。熱と設置導入産業機器を生産。2014年に大型産業用のバイオマス・ボイラーメーカーのBinder社(オーストリア)を買収統合している。