[連載]

都市の未来にふさわしい、新しい電力供給(配電)方式を!

─ エネルギー供給強靱化法に基づく新しい配電設備に何が必要か ─
2022/01/09
(日)
勝又 淳旺 エバーグリーンエナジーイニシアティブ 代表取締役社長

配電用変電所を新設する場合の計画立案方法

 配電用変電所を新設する際は、

  1. 既存の配電用変電所の変圧器が、需要家側の電力需要の増加によって高負荷になりつつある場合
  2. 住宅団地の新規造成や駅前再開発などによって、新規の電力需要が発生する場合

などを考慮する必要がある。

 このとき、変圧器の負荷率の程度や新規需要の時期・規模などは、地方自治体など行政側の地域の開発方針や状況を考慮して、新設する変電所の規模や増設時期を、遅滞なく最も経済的な方法で立案する必要がある。

配電用変電所の設置地点の選定

 配電用変電所の設置地点を選定する場合は、次の点に配慮しなければならない。

  1. 将来、電力需要の中心となるような場所であること(必要であれば建物の地下)。
  2. 変電所の電源となる送電線(配電用変電所を稼働する変電所の電源)の建設が容易であること。
  3. 設置地点は角地もしくは大通りに面した土地を選定すること(6kV配電線は容量の制約から、1つの変圧器あたり最大で7回線引き出すため)注4
  4. 自然災害がないこと(崖、川、湖などに隣接していないこと)。
  5. 住宅地は避けること(対策方法はあるが、変電所の騒音が発生するため)。対策方法としては、変圧器を低騒音型にする、防音板をつける、建物をコンクリート構造にするなどがある。

 変電所の電源となる送電線の、地権者や周辺住民との建設交渉が前提となるため、地元住民との合意には時間が必要となる。このため、総合的な視点から、街づくりの最初の段階から設置地点の選定に参画することが重要である。

変電設備の方式や機器の選定方法

 次に、選定した用地の将来にわたる地域開発計画に配慮し、さらに地権者や地域住民、地域行政の意向を考慮した変電所機器の型式(屋外型か密閉型・屋内型など)を決める。併せて、変電所の電源線の建設方法(架空送電線または地中送電線、ルートの選定など)や、建設期間も含めて総合的に最も経済的な方策を決める。

 配電線については、周辺で稼働している既設の設備方式を参考にして検討することが、経済的で効率的である。


▼ 注4
例えば、1つの配電用変電所は、通常3つの変圧器で構成されているので、20回線程度(≒7回線×3)の配電線を引き出すことになる。このため、電柱で配電線を引き出すと、変電所の付近が電柱で輻輳するため、地中線を敷設するスペースを確保する必要がある。

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