[特別レポート]

サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業

― SBTをベースにした具体的な削減行動を促進 ! ―
2021/09/06
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

カーボンニュートラル時代を迎えて、「いかにCO2排出ゼロのビジネスを展開するか」が、企業の存亡を左右する喫緊の課題となってきた。もはや企業は、サプライチェーンも含めたすべての過程において、グリーンウォッシュ(注1)ではなく、科学に基づいた目標(SBT)をベースに、脱炭素を実現するライフサイクルアセスメント(LCA)(注2)を企業の中心に据えて、ビジネス活動を行うことが基本となってきている。
ここでは、環境省が2021年8月20日に発表しスタートした、「令和3(2021)年度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」を紹介しながら、最新のSBTイニシアティブの動きや、CO2に代表される企業などの温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量を把握するために重要さを増している、GHGプロトコルイニシアティブが規定する「スコープ1、2、3」の役割を見ていく。

2021年度推進モデル事業に5社を選定

〔1〕サプライチェーンの脱炭素化を重視

 環境省では、パリ協定注3の達成に向けて、カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)に関する多角的な取り組みを推進しているが、2021年8月20日、公募していた「令和3(2021)年度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」(以下、推進モデル事業)への参加企業として、下記の5社を決定し発表した注4

  1. アシックス
  2. 塩野義製薬
  3. セブン&アイ・ホールディングス
  4. 大成建設
  5. フジクラ

 図1および表1に示すように、環境省では、これまで企業が脱炭素に取り組む経営戦略上の目的や意義を明確にするため、「SBT(科学に基づいた目標、後述)の達成に向けたCO2削減計画策定支援モデル事業」として、2019年度に5社、2020年度に5社の参加の下に、2年にわたって支援モデル事業を実施してきた。

図1 脱炭素化推進モデル事業における2020年度までの取組結果と今年度(2021年度)が目指す課題

図1 脱炭素化推進モデル事業における2020年度までの取組結果と今年度(2021年度)が目指す課題

出所 環境省、「令和3年(2021)度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業の事業概要」、2021年7月5日

表1 環境省のSBT等の達成に向けたモデル事業

表1 環境省のSBT等の達成に向けたモデル事業

出所 各種資料をもとに編集部で作成

 この2年間の成果は、環境省が図1に示す「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック」(全100ページ)としてまとめ、2021年3月に発行している。


▼ 注1
グリーンウォッシュ:Greenwashing。実体はそうではないのに、あたかも環境(エコ)に配慮しているかのように見せかけて、消費者に誤解を与えるようなこと。エコなイメージを思わせる「グリーン(Green)」と、見せかけのという意味の「ホワイトウォッシュ(Whitewash)」を組み合わせた造語。

▼ 注2
LCA:Life-cycle assessment、ある製品やサービスのライフサイクル全体(資源採取⇒原料生産⇒製品生産⇒流通・消費⇒廃棄・リサイクル)を定量的に評価する手法。この場合は、CO2排出量全般を評価する。
https://www.env.go.jp/press/116491.pdf

▼ 注3
パリ協定:「京都議定書」(2020年以降は失効)の後継となる、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み(2020年1月以降)。2015年12月にCOP21において全会一致で採択。産業革命以前(1750年前後)に比べて、地球の平均気温上昇を2℃より十分低く抑える(2℃目標。Well Below 2℃:WB2℃)、世界共通の長期目標(努力目標として1.5℃に抑えることを追求する)。

▼ 注4
公募期間は2021年年7月5日〜同年7月30日。参加企業を募集していた「令和3年度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」には9件の応募があり、業種、事業内容、GHG(CO2)排出量、削減目標等を総合的に検討して5社を決定した。
https://www.env.go.jp/press/109886.html

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