シスコの革新的な製品設計による環境へアプローチ
シスコは長年にわたって、製品が与える環境への負荷を最小化する取り組みを行い、イノベーションを生み出しているという。ここでは、シスコが行う「革新的な製品設計による環境へのアプローチ」を中心について見ていく。
〔1〕ネットワークイノベーションの未来
昨今、日本だけでなくグローバルにも、企業や公共(地方自治体など)の顧客とサービスプロバイダとの技術的、サービス的な結びつきが非常に強くなってきている(図3)。
図3 ネットワークイノベーションの未来
出所 サステイナブルな成長実現に向けた戦略 〜Cisco CXOシンポジウム 〜(2021年12月21日)、高橋 敦氏、「Cisco Silicon One テクノロジーイノベーションによる環境へのアプローチ」より
具体的な例として、企業、公共のアーリーアダプター(先進的なユーザー)によってWi-Fi6やSD-WAN(ソフトウェアで制御可能な広域網)のユースケースが創出された。その後、サービスプロバイダがマネージドサービスという形で、マネージドWi-Fi、マネージドWAN/LANといったサービスが提供され、Wi-Fi6やSD-WANが市場に広く浸透してきている。
一方、ネットワークの基礎技術については、サービスプロバイダ側でイノベーションが起こり、企業、公共のネットワークに展開していくという経験がある。身近な例として、5Gはサービスプロバイダで技術やアーキテクチャの検討や実装が進み、その後、ローカル5Gという形で企業や公共ユーザーに普及し始めてきている。
また、800G/400Gというイーサネットの超高速インタフェースについても、サービスプロバイダ側が主導する形で、標準化や実装が進んできており、現在、企業や公共側では、400G/100Gの普及がまさに始まろうとしている。
写真1 高橋 敦(たかはし あつし)氏(シスコシステムズ合同会社 サービスプロバイダ—アーキテクチャ事業担当 執行役員)
出所 編集部撮影
シスコシステムズ合同会社の高橋 敦氏(写真1)は、「環境に関する製品の基礎技術についても、サービスプロバイダ側でイノベーションが起こり、企業、公共ユーザー側で技術が浸透していくというシナリオになる可能性があります」という。
脱炭素への取り組みは、当該企業1社だけでなくバリューチェーン全体で取り組みを行わなければならない。今、サービスプロバイダ市場で起きている製品設計に関するグリーンイノベーションを知ることが、企業、公共側のグリーンテクノロジーの未来を予測することになるのだ。
〔2〕シスコ本社の開発部門の活動
現在、世界のインターネットの状況は、COVID-19の影響でグローバルでは12億人の子供たちがハイブリッド学習に数週間で移行し、88%の組織がリモートワークを推奨した一方で、現在でも30億人がインターネットに繋がらない(もしくは繋がりにくい)、また十分なブロードバンド環境は29カ国でしか整っていないというデジタルデバイド(情報格差)も存在しているのだ。
このオフラインの世界に、インターネットをもち込むことができれば、世界経済に6兆7,000億ドル(約670兆円。1ドル100円換算)の影響を与えて、5億人の貧困を回避できると言われている。
シスコ本社の開発部門では、このデジタルデバイドを解消していくために、「Internet for The Future」(未来のインターネット)という技術戦略のもと活動を推進している。
特に、インターネットの経済性に大きな影響を及ぼすシリコンやオプティクス、システムやソフトウェアにおいて重点的な開発と投資を進めているという。この技術革新を進める過程においては、「常に環境への負荷を最小化する」ことを優先事項としている。
シスコ本社の開発部門が開発したサービスプロバイダ向け製品群は、5GのIPトランスポートを中心として日本全国へ展開されている。これまでは、性能面や機能面のアドバンテージに関する議論がほとんどであったが、最近では5Gやローカル5Gを活用していかにベネフィットを生み出すのかという検討に議論がシフトしてきているという。
さらに、直近では、「通信インフラの環境に与える影響に関する議論が急速に増えてきている」「環境に関しては、具体的には、消費電力はもちろん、省スペースやクーリング(冷却)、また配送時の製品の大きさや重さなど、機能や性能を超えた議論が活発に行われている」と高橋氏と語る。