[特別レポート]

シスコの2040年ネットゼロへのアプローチと5G実環境を構築した5Gショーケース

― シスコのパーパスレポートと革新的な製品開発による環境への取り組み ―
2022/04/11
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「革新的な設計によって、製品のエネルギー効率を高める」

〔1〕製品設計による環境への3つのアプローチ

 シスコの革新的な製品設計による環境へのアプローチは、次の3つである。

  1. イノベーション
  2. 先端技術
  3. アーキテクチャ変革

 これらは、すでに同社の六本木オフィスの5Gショーケースで見ることができ(後述)、同社はこれらを通して、次世代通信インフラにおける環境への負荷を軽減していく。

〔2〕イノベーション:Silicon One搭載ルータ

 シスコは、2019年12月にSilicon Oneを発表してから約2年で11種類のシリコンを開発している。

 Silicon Oneは、これまでのシリコン設計を一から見直し、性能、機能、効率の観点で技術革新を実現した。スイッチング性能の飛躍的な向上、超低消費電力化、ルーティング機能/バッファリング(データ通信の際の一時的なメモリ保管機能)の向上、ルータオンチップ、ラインカードNPU(Network Processor Unit)、ファブリック(ネットワーク機器)におけるシリコンの共通化を図りながら、最新のSilicon Oneでは、1チップで25.6Tbps(テラビット/秒)を実現できるようになった。このSilicon Oneを搭載したCisco 8201では、5、6年前の従来ルータと比較して、1ラックあたりの帯域は77倍、消費電力は38分の1を実現し、環境への負荷を大きく軽減できている(図4)。

図4 Cisco Silicon Oneのイノベーションにより、消費電力、スペース、サプライチェーンの効率化を実現

図4 Cisco Silicon Oneのイノベーションにより、消費電力、スペース、サプライチェーンの効率化を実現

出所 サステイナブルな成長実現に向けた戦略 〜Cisco CXOシンポジウム 〜(2021年12月21日)、高橋 敦氏、「Cisco Silicon One テクノロジーイノベーションによる環境へのアプローチ」より

 また、大きさも48分の1となって省スペース化を実現し、重量も64分の1となった。これによって、輸送に伴うCO2排出量の抑制にも貢献しているという。消費電力だけではなく、スペースやサプライチェーンの観点でも効率化を実現しているのだ。

 2021年10月にはドイツのドイツテレコムが、同Silicon One搭載ルータを採用し、環境目標の達成に向けて貢献していることが発表された。

 このルータのシステムパフォーマンスは260Tbpsと高速で、現在稼働しているルータと比較して、消費電力は92%削減、ラックスペースは87.5%削減でき、ドイツテレコムのグリーンイニシアチブを支援できていると、同社が強調している。また、短期間での検討で成果を出すという点も採用するにあたり、非常に重要であったという。

〔3〕先端技術:コヒーレント技術(アカシア社)

 これまでの従来のネットワークモデルでは、伝送装置が垂直統合されており、サービスを展開するごとに重厚長大な伝送装置を配備する必要があった。

 しかし、コストの高さ、技術革新の遅さの観点から、ディスアグリゲーション(分離)が進み、まずトランスポンダ(中継機器)が市場に進出し、伝送領域ではマルチベンダ化が進んできた。さらに直近では、コヒーレント技術注14の進化によって、トランスポンダのサイズをオプティクスの大きさまで小型化できるようになった。

 コヒーレント技術に関しては、2021年3月にシスコが約5,000億円で買収が完了したアカシア社(Acacia Communications)の先端技術を活用している。アカシア社の先端技術によって、スペースや電力を消費するシャーシ型のトランスポンダが不要になったということだ(図5)。

図5 先端テクノロジーによる環境への取り組み

図5 先端テクノロジーによる環境への取り組み

出所 サステイナブルな成長実現に向けた戦略 〜Cisco CXOシンポジウム 〜(2021年12月21日)、高橋 敦氏、「Cisco Silicon One テクノロジーイノベーションによる環境へのアプローチ」より

 具体的には、旧来のシスコのトランスポンダは4RU(4ラックユニット)のシャーシ型の製品であったが、これがインタフェースモジュールに搭載可能なサイズまで小さくなった。その結果、ルータにオプティクスとして、トランスポンダを取り込めるようになり、その結果、圧倒的な省スペース化、省電力化を実現できるようになる。

〔4〕アーキテクチャ変革:Routed Optical Networking

 シスコでは、IPレイヤと伝送レイヤとの統合によって、旧来の大規模ネットワークの「冗長であること」「複雑であること」「高コストであること」という課題を解決するために、フラットでシンプルなネットワークを実現するRouted Optical Networking注15へのアーキテクチャ変革を推進してきている(図6)。階層がフラットなアーキテクチャになるため、装置点数を大幅に削減できることに加えて、IP+オプティカルの技術と、エンドツーエンドのIP化によって自動化を適用しやすくなる。

図6 アーキテクチャ変革による環境への取り組み:Routed Optical Networking

図6 アーキテクチャ変革による環境への取り組み:Routed Optical Networking

出所 サステイナブルな成長実現に向けた戦略 〜Cisco CXOシンポジウム 〜(2021年12月21日)、高橋 敦氏、「Cisco Silicon One テクノロジーイノベーションによる環境へのアプローチ」より

 そのため、CAPEX(キャペックス)、OPEX(オペックス)注16の観点で、大幅な効率化を実現できるが、特にOPEXの観点では、消費電力やスペース、オペレーションの削減が効果として現れ、その結果CO2排出量の削減にも貢献している。

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