リコーや戸田建設、武田薬品工業、三井住友信託銀行など、脱炭素社会の早期実現および1.5℃目標の達成を目指す215社が加盟する、JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)は、2022年7月26日、「再生可能エネルギー(再エネ)選択肢の多様性確保に向けた意見書」注1を公表し、政府の関係省庁に提言を行った。
この提言の背景には、図に示すように、2021年時点で、世界気温は産業革命前からすでに約1.1℃上昇しており、これを1.5℃に抑えるために、2020年以降に許容される残りのCO2排出量(カーボンバジェット)は、わずか約330Gtしか残っていないことが挙げられている。このままでは、2030年を待たずに1.5℃超えてしまう危機的な状態となっているため、緊急対策が必要とされている。
図 気温上昇を1.5℃に抑えるための脱炭素の緊急性(残されたカーボンバジェット)
❶2021年時点で、世界気温は産業革命前からすでに約1.1℃上昇
❷この間に排出されたCO2は約2460Gt(ギガトン、過去の累積排出量)
❸1.5℃に抑えるために、2020年以降の残りのCO2排出量(カーボンバジェット)はわずか約330Gtである
❹2020年時点での年間排出量(41Gt)のままでは、2030年を待たずに1.5℃を超えてしまう(約8年後=8×41Gt=328Gt≒330Gt)
出所 JCLP:COLUMN「脱炭素社会とは? 〜求められる理由と、実施すべき取り組み・課題〜」、2022年7月21日
同意見書では、具体的に、①電力需要家が経済的かつ迅速に再エネ調達をするために、多様な選択肢を享受できる市場環境を整備すること、②バーチャルPPA注2のスキームを構築しやすくする環境を整備すること、などを求めている(表参照)。
表 再エネ選択肢の多様性確保に向けた意見書の概要
注1 https://japan-clp.jp/wp-content/uploads/2022/07/JCLP_PolicyProposals_20220726-1.pdf
注2 バーチャルPPA:発電事業者が、再エネ電力がもつ環境価値だけを別途、需要家(企業)に販売するモデル(電力販売契約)。「再エネ電力と環境価値」をセットにして販売するモデルはフィジカルPPAといわれる。