[特集:特別対談]

脱炭素・レジリエンスを強化したLooopの「エネプラザ」

― 「浦和美園E-フォレスト 第3期」で太陽光(51戸)+蓄電池、EV2台が本格稼働 ! ―
2022/10/13
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

今後の展開:ビジネスとして拡大するには、新たなパートナーの登場が必要

西 最後に今後の抱負をお聞かせください。カーボンフリーやエネルギー安全保障など今後の社会情勢を視野にしたとき、この取り組みは注目されて然るべきだと私は思っていますが、御社はどのようにお考えですか。

小嶋 確かにそうなのですが、ビジネスとして考えた場合、資金回収が最大の課題となります。今後、電気使用料だけで利益を出していくのは厳しいと考えています。国や自治体からは、政策や補助金などでご支援いただきたいということもありますが、加えて、新しいビジネスパートナー様の参加にも期待しています。

 例えば、スマートシティ建設を担うハウスメーカー様とのコラボレーションです。再エネ比率の高い電力を安定的に使えるということは、街区全体の重要なコンセプトであり、大きな価値といえます。その対価として、100万円なり200万円のイニシャルコストを住宅の購入価格に加算していただく、といった使用料金以外のコスト回収のスキームを考えられたらと思っています。家主様側から見ても、住宅の建設費用に数%の金額を上乗せするだけで再エネ電気が利用できるわけで、メリットはあると思います。

 分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)のそうした可能性を広げるためにも、現在の「浦和美園E-フォレスト 第3期」の案件を着実に進めるとともに、コストや技術面での課題を洗い出し、それをひとつひとつ解決していきたいと考えています。

西 ありがとうございました。

エネプラザの概要
『Looopのエネプラザを導入した「浦和美園E-フォレスト 第3期」』は
こちら

対談後記: マイクログリッドの普及促進のためにも、
国や自治体と一体になった新しい政策や施策が不可欠

 浦和美園の場合、埼玉県さいたま市がブランディングの一環として企画し、そこにLooopをはじめさまざまな事業者が参入し、各種サービスを提供している。入居された方々は環境に高い意識をもち、分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)のコンセプトに賛同して再エネ電力を利用している。今回のシステムは、それだけの価値がある住環境だと考えられる。

 設備も、Looopが入居者に初期費用がかからないPPAで提供していて、住宅販売価格に上乗せはせずに電気代だけで利益回収しようとしている。

 Looopのエネプラザのような取り組みを経済面(コスト面)でサポートするには、国や自治体の政策や施策も必要である。例えば、マイクログリッド住宅の中古販売で、適正価格の取引をあと押しする自治体の認証制度を設けたり、取得したデータの利活用や横への展開・横への連携、取得したデータを通した利用者や住民に対する自治体のサービス強化などの政策や施策が考えられる。

 それらは地域のブランディングや活性化につながり、今後の地域づくりやコミュニティ形成において、大きな流れの1つになる。

 さらに、Looopのエネプラザのような取り組みによって、日本の地域別データに基づいた、「消費」「蓄電量」「発電量」「ライフスタイル」といったパラメータごとに即したシステム設計や制御のベストプラクティスを探っていくことも重要で、これはまさに「ノウハウ」となる。

 Looopは、今回の「浦和美園E-フォレスト 第3期」のエネプラザを実際に手掛けることで、ノウハウが着々と蓄積できている。その意味はとても大きい。(編集部)

◎プロフィール(敬称略)

小嶋 祐輔(こじま ゆうすけ)[写真左]西 宏章(にし ひろあき)[写真右]

小嶋 祐輔(こじま ゆうすけ)[写真左]

株式会社Looop 取締役 電力事業・技術開発管掌

2008年ソニー株式会社入社、アクセンチュア株式会社を経て、2014年8月株式会社Looop入社。2016年電力事業本部本部長、2018年取締役を経て2022年4月取締役、電力事業・技術開発管掌に就任。エンジニアリングとビジネスの両輪を動かしたいという、大学時代からの思いのもとLooopに入社。新技術により社会課題の解決を目指している。

西 宏章(にし ひろあき)[写真右]

慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科 教授。博士(工学)。

技術研究組合新情報処理開発機構、(株)日立製作所中央研究所の研究員を経て、2003年に慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科助手、2006年に同専任講師、2014年に教授。国立情報学研究所 客員准教授(2010年4月〜2014年3月)。研究分野は、通信工学(Communication/Network Engineering)、社会システム工学、安全工学、情報通信における計算機システム(計算機システム・ネットワーク)など。

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