今後の展開:ビジネスとして拡大するには、新たなパートナーの登場が必要
西 最後に今後の抱負をお聞かせください。カーボンフリーやエネルギー安全保障など今後の社会情勢を視野にしたとき、この取り組みは注目されて然るべきだと私は思っていますが、御社はどのようにお考えですか。
小嶋 確かにそうなのですが、ビジネスとして考えた場合、資金回収が最大の課題となります。今後、電気使用料だけで利益を出していくのは厳しいと考えています。国や自治体からは、政策や補助金などでご支援いただきたいということもありますが、加えて、新しいビジネスパートナー様の参加にも期待しています。
例えば、スマートシティ建設を担うハウスメーカー様とのコラボレーションです。再エネ比率の高い電力を安定的に使えるということは、街区全体の重要なコンセプトであり、大きな価値といえます。その対価として、100万円なり200万円のイニシャルコストを住宅の購入価格に加算していただく、といった使用料金以外のコスト回収のスキームを考えられたらと思っています。家主様側から見ても、住宅の建設費用に数%の金額を上乗せするだけで再エネ電気が利用できるわけで、メリットはあると思います。
分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)のそうした可能性を広げるためにも、現在の「浦和美園E-フォレスト 第3期」の案件を着実に進めるとともに、コストや技術面での課題を洗い出し、それをひとつひとつ解決していきたいと考えています。
西 ありがとうございました。
エネプラザの概要
『Looopのエネプラザを導入した「浦和美園E-フォレスト 第3期」』は
こちら
対談後記: | マイクログリッドの普及促進のためにも、 国や自治体と一体になった新しい政策や施策が不可欠 |
浦和美園の場合、埼玉県さいたま市がブランディングの一環として企画し、そこにLooopをはじめさまざまな事業者が参入し、各種サービスを提供している。入居された方々は環境に高い意識をもち、分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)のコンセプトに賛同して再エネ電力を利用している。今回のシステムは、それだけの価値がある住環境だと考えられる。
設備も、Looopが入居者に初期費用がかからないPPAで提供していて、住宅販売価格に上乗せはせずに電気代だけで利益回収しようとしている。
Looopのエネプラザのような取り組みを経済面(コスト面)でサポートするには、国や自治体の政策や施策も必要である。例えば、マイクログリッド住宅の中古販売で、適正価格の取引をあと押しする自治体の認証制度を設けたり、取得したデータの利活用や横への展開・横への連携、取得したデータを通した利用者や住民に対する自治体のサービス強化などの政策や施策が考えられる。
それらは地域のブランディングや活性化につながり、今後の地域づくりやコミュニティ形成において、大きな流れの1つになる。
さらに、Looopのエネプラザのような取り組みによって、日本の地域別データに基づいた、「消費」「蓄電量」「発電量」「ライフスタイル」といったパラメータごとに即したシステム設計や制御のベストプラクティスを探っていくことも重要で、これはまさに「ノウハウ」となる。
Looopは、今回の「浦和美園E-フォレスト 第3期」のエネプラザを実際に手掛けることで、ノウハウが着々と蓄積できている。その意味はとても大きい。(編集部)