災害の電力ひっ迫時における、住民への対応について
西 さきほど設計値では再エネ自給率60%とお聞きしましたが、私は50%でも十分だと思っています。それだけ達成できていれば、例えば大きな震災などがあって系統からの送電がストップしても、それまでの使用量を半分にすれば運用できるわけです。それだけでも住民の方々にとっては、かなりの安心材料になると思うのです。
小嶋 住民の方々には、「天気が悪く太陽光発電ができなくて、電力需要が多い夏冬でも、系統ダウンしてもこのくらいの時間は送電できます」と説明しています(図7)。また、スマートメーターには最大電流を抑制する仕組みもあるので、それを万一の際の送電維持に役立てることもできます。
図7 エネプラザの自立運転時の継続時間シミュレーション
出所 株式会社Looop、「Looop エネプラザご説明資料」より、2022年9月13日
西 例えば系統側で停電が発生した際には、どのようになりますか?
小嶋 系統側で停電が発生したら、マイクログリッド内で自立運転を開始します。例えば、これが朝8時だとしたら、その時の蓄電池125kWhの初期SoC(State of Charge、充電状態)は90%、加えてEVの車両接続(40kWh×2台)がなされ、1時間後の9時に自立運転が開始されるというふうになります。
この時のEV車両2台の初期SoCは100%です。
自立運転時は、各家庭で利用可能な消費電力は1kWに制限されることになります。
運用や状況の変化に合わせて、最適化できる設計手法を確立したい
西 現在まで運用してこられて、設計や設定についてはどのように評価していますか。
小嶋 問題なく運用できているので、ある程度のレベルには達していると考えています。ただ、これは全体コストとの兼ね合いになるので、状況や条件に合わせた最適設計に柔軟に変更できるよう、システムの考え方を整理することが重要だと実感しています。
西 蓄電池がどれだけあったとしても、その蓄電容量に応じた適切な制御が存在しますよね。ですから、どのような電池容量でもシェアできますが、現状は全体コストを勘案して少ない容量を設定している。ただ、将来的に電池容量を増強した際は、その状況に適した制御方法を見つけることで、増えた容量を使い切り、全体でコストを最適化するような手法を見つけていく、ということでしょうか。
小嶋 そうですね。あとは蓄電池や太陽光パネルのコストが下がっていったときに、最適化の最良点が変わってくる可能性もあります。コストだけで考えると、容量は一番少ないものがベストになってしまいがちですが、そうではない設計手法を模索して実現することが大切と考えています。