工場で使用する化石燃料の再エネ化(電化)
再エネ化(電化)や再エネ由来燃料の導入のほか、「クリーンガス証書 」も2024年4月1日からスタートする。
電力以外に、製造業の工場などで使われる「燃料」もCO2排出ゼロのものに代替えしていく必要がある。その方法として、石田氏は次の3点を挙げた(図3)。
(1)化石燃料から再エネ由来の電気ヘの切り換える方法(電化)
(2)化石燃料のすべてを電化することは難しいため、バイオガスやグリーン水素など再エネ由来燃料に切り換える方法
(3)バイオガスなどの環境価値を証書化したガス証書を利用する方法。この方法は、すでにヨーロッパなどでは制度化が始まっており、日本でも2024年度から「クリーンガス証書」注7がスタートする予定
以降では、(2)の再エネ由来燃料に切り換えて再エネ化(電化)する、工場における事例について紹介しよう。
図3 電力分野に続いて自社の工場燃料を再エネに切り換える3つの方法
[出典]環境省
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日
【事例1】デンソー・グループ:電化とグリーン水素でCO2排出量を削減
自動車部品の大手メーカーであるデンソーでは、福島県の工場(デンソー福島)で電化とグリーン水素を組み合わせてCO2削減を進めている(図4)注8。
(1)製造工程の中で、従来LPガス(液化石油ガス)を利用していた部分を電化する(加熱炉)。
(2)電化が難しい工程では、工場内に設置した太陽光発電と風力発電を使って製造されたグリーン水素をバーナーの燃料として利用している(アフターバーナー炉)。
これら2つの方法を組み合わせて、工場におけるスコープ1(自社直接排出分)のCO2削減を実施している。
図4 電化とグリーン水素でCO2を削減するデンソー・グループ
[出典]デンソー、「エネルギーの地産地消モデルを福島から次世代へ」、2023年3月10日
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日
【事例2】パナソニック・グループ:バイオガスとグリーン水素でCO2排出量を削減
北海道・帯広にあるパナソニック スイッチングテクノロジーズ 帯広工場は車載デバイス工場であるが、バイオガスとグリーン水素の使用を計画中だ(図5)注9。
北海道では酪農が盛んな当地の特性を活用し、エア・ウォーターが製造・供給する家畜ふん尿由来のバイオメタン(BM:Bio Methane)を使って発電(BM発電)し、工場用電力として利用する。また、帯広工場で製造しているEVリレー(電気自動車用部品の1つ)は製造工程で水素ガスを使用しているが、供給するバイオメタンの一部から水素を製造(CO2フリー水素)し、これを製品の一部に利用していきます。
利用開始は2025年度の予定で、2027年度には帯広工場のCO2排出量の半減を目指している。
図5 パナソニック・グループのバイオメタン(BM)導入の概念図
BM:Bio Methane、バイオメタン。下水汚泥や生ごみ、家畜ふん尿などバイオマス由来の「バイオガス(CH4 60%、CO2 40%)」からCO2分を取り除いた「メタンを主成分としたガス」のこと
[出典]パナソニック・インダストリーおよびエア・ウォーター
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日
注7:クリーンガス証書:再エネ電力による「グリーン電力」と同様、合成メタンやバイオガスの環境価値を証書化して取引を行う形態。一般社団法人 日本ガス協会が制度化を進めており、2024年度の開始を目指している。
日本ガス協会、「クリーンガス認証実証事業に係る評価委員会の設置について」、2023年8月4日
注8:デンソー「エネルギーの地産地消モデルを福島から次世代へ」、2023年3月10日
注9:パナソニック インダストリー、エア・ウォーター プレスリリース、「業界初、家畜由来のバイオメタンを工場電力と製品材料に活用」、2023年7月28日