[標準化動向]

802.1/802.3の標準化動向(1):40ギガ以上の超高速イーサネットの標準化を検討開始!

=802.1および802.3の標準化動向を整理する=
2006/07/20
(木)
SmartGridニューズレター編集部

802.1WG、802.3WGの最近の動向(審議内容)

有線のブロードバンド関連を中心とするこの標準化レポートでは、主に802.1WG、802.3WGの2つのWGの活動を担当する。そこで、この2つのWGの、最近の標準化の中心的なテーマを整理すると次のようになる。

[1] 802.1WGの標準化動向

最近の802.1WGは、「インターワーキング(網接続)」「セキュリティ」「AVブリッジング」の3つのタスク・フォース(TF)に分かれて標準化が行われている。

(1) インターワーキング(網接続)

網の相互接続に関する方式を審議するタスク・フォースであり、いわゆる、ブリッジやスイッチに関する標準化を行っている。最近の主な標準化プロジェクトは次の通りである。

■ 802.1ag:到達性障害管理(Connectivity Fault Management)
■ 802.1ah:通信事業者バックボーン向けブリッジ(Provider Backbone Bridging)
■ 802.1aj :2ポートMAC間リレー(Two Port MAC Relay)
■ 802.1ak:多属性登録プロトコル(Multiple Registration Protocol)
■ 802.1ap:VLANブリッジ MIB(VLAN Bridge MIBs)
■ 802.1aq:最短経路ブリッジング(Shortest Path Bridging)

(2) セキュリティ

レイヤ2網内のセキュア(安全)な通信を実現するための方式を標準化しており、現在は次のようなプロジェクトが活動中である。

■ 802.1af:セキュア鍵交換(Security Key Exchange)
■ 802.1AR:セキュア・デバイス(ID Secure Device Identity)

これらの他に、802.1afの本体規格である「802.1AE :MACセキュリティ(MAC Security )」の標準化が、802.1afに先行して2006年6月に標準化完了している。

(3) AV(Audio Visual)ブリッジング

家庭内接続用途のマルチメディア対応スイッチング方式の標準化を行っており、現在、次のプロジェクトが正式にスタートしているが、その他の関連プロジェクトも順次、正式に標準化が開始される見込みである。

■ 802.1AS:時刻同期(Time Synchronization)

[2] 802.3WGの標準化動向

1983年に、最初のイーサネット規格(IEEE 802.3 10BASE5)の標準化が完了して以来、イーサネットはさまざまな仕様拡張が続けられている(図2)。

図1
図2 現在までの802.3のプロジェクト (クリックで拡大)

現在も複数のプロジェクトが平行して進められているが、主な標準化プロジェクトは「10ギガ・イーサネットの伝送媒体拡張」と「イーサネットの基本仕様拡張」の2つのカテゴリーに分類できる。

(1) 10ギガ・イーサネットの伝送媒体拡張

10ギガ・イーサネットの本体規格(IEEE 802.3ae)は2002年に標準化されたが、この本体規格では、光ファイバ向けのみ7種類の伝送方式が規定された。IEEE 802.3aeの標準化完了後、10ギガ・イーサネット適用領域を広げるための新しい伝送媒体に対応した10ギガ・イーサネット方式の標準化プロジェクトが進められてきた。現在審議が進められている、または最近標準化が完了したプロジェクトは、次の通りである。

■ 802.3an:より対線向け10ギガ・イーサ(10GBASE-T): 2006/6 標準化完了
■ 802.3aq:マルチモード・ファイバ向け10ギガ・イーサ(10GBASE-LRM、注2)
■ 802.3ap:筐体バックプレーン向け10ギガ・イーサ(Backplane Ethernet)

注2:
L:Long Wavelength、波長が1.3μmの長波長レーザーを使用する
R:64B/66B符号を採用したLAN PHY(物理層)であること(64B/66B:64ビットの送信データを66ビットの送信符号に変換する符号化方式)
M:マルチモード・ファイバ向けの方式であること)

これらのプロジェクトの他、PON(Passive Optical Network)に対応した10ギガ・イーサネットPON (10G EPON)の検討会(Study Group)が2006年3月から開始されている。

(2) イーサネットの基本仕様拡張

イーサネットの基本仕様を拡張するため、次の標準化プロジェクトが進められている。

■ 802.3as:フレーム長延長(Frame Expansion)
■ 802.3ar:輻輳管理(Congestion Management)
■ 802.3at:端末電源供給拡張(DTE Power Enhancement)

(3) 次世代の超高速イーサネットの標準化へ!

前述した2つのカテゴリーの他に、10ギガよりもさらに高速化した超高速イーサネットが2006年7月に開催されたIEEE 802委員会総会において提案された。目標とする通信速度は決定していないが、少なくとも40ギガ{40Gbps}以上を目指すものと言われている。提案の詳細は次回に解説する。

 


【参考文献】
1) “OVERVIEW AND GUIDE TO THE IEEE 802 LMSC”, 2004/9, http://www.ieee802.org/802%20overview.pdf
2) “IEEE 802 Orientation for new participants” , 2006/3, David Law and Pat Thaler, http://www.ieee802.org/newcomer_orientation.ppt
3) “IEEE PROJECT 802 LAN MAN STANDARDS COMMITTEE (LMSC) POLICIES AND PROCEDURES”, 2006/1, http://ieee802.org/policies-and-procedures.pdf
4)『イーサネットの歴史探訪記』、日経ネットワーク、p.68-p.93、2003/1
5)石田、瀬戸監修、『改訂版 10ギガビットEthernet教科書』、インプレス、2005

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