GPSが"キャリアのビジネス"にも合致
GPSサービスで先行したauの戦略
auはGPS搭載義務化以前から、この分野の可能性にいち早く目を付けて積極的なサービス展開を行っている。その背景には、同社がクアルコム製チップセットを全面採用していたという理由もあるが、それ以上に大きかったのがGPSを活用したサービスが「パケット料金定額制」が前提になるからだ。
auはパケット料金定額制の導入で他社に先駆けており、さらにパケット料金定額制で「ダブル定額ライト」、「ダブル定額」という上限金額付きの二段構えの価格設定をしている。
この料金プランの場合、ユーザーのコンテンツ・サービス利用が少なければ、パケット料金定額制の利用料は月額1050円に留まるが(ダブル定額ライトの場合)、ユーザーが積極的にコンテンツ・サービスを利用すれば、上限額の月額4,410円までデータARPU(Average Revenue Per User、加入者一人あたりの月間平均売上高)が伸びる。そのため同社のコンテンツ・サービスの基本スタンスでは、「定額制の必要性を訴求すること」と、その積極的な利用で「定額制上限額までデータARPUを伸ばす」ことが重要になる。
GPS利用サービスは地図とセットで使うことが多く、とくにナビゲーション・サービスでは連続的に地図のダウンロードを行う。着うたフルと同様に、パケット料金定額制が必須の「リッチな」サービスである。また、普段の仕事にも使える実用的なサービスとして、着うたフルの利用傾向が低いビジネス層のユーザーにも訴求できる。
本連載第1回で述べたとおり、auは通信の「定額制・大容量化」時代にあわせて、自社ブランドで積極的にサービス展開を行う"ディズニーランド型"のビジネスモデルを導入している。
GPS利用サービスもそれを構成するピースのひとつであり、auのサービスとして歩行者向けナビゲーションの「EZナビウォーク」と、クルマのパッセンジャー向けサービス「EZ助手席ナビ」を投入。利用者数は順調に伸びており、EZナビウォークが月額会員94万人、EZ助手席ナビの月額会員は29万人に達している(2006年9月末時点)。また、これらGPSナビゲーション・サービスは「(サービスの)解約率が低いのが特徴」(KDDI)である。
ほかにもauは、GPSで家族のau携帯電話の位置を確認する「安心ナビ」を導入しており、今年(2006年)の夏商戦からとくに積極的にPRしている。その背景には、安心ナビが"親子・家族で使う"ものであり、MNPのタイミングにあわせて家族単位の契約増を図るという狙いがある。
この家族まるごとの契約は「独占世帯」と呼ばれており、auはその獲得シェアがこれまで低かった。そこでGPSを"家族向けの安心・安全"サービスとして活用し、家族契約の掘り起こしに使っているのだ。
NTTドコモもGPSで盛り返しを図る
利用中の画面(P903i)
一方、NTTドコモはGPSサービスの本格導入では遅れたものの、今年発売した子どもの位置確認・追跡機能を搭載した「キッズケータイ」では低年齢層市場の開拓に成功し、最新の903iシリーズではナビゲーションからセキュリティまで、幅広くGPS関連サービスを用意。この分野の巻き返しを始めている。
すでにauが先行しているGPSナビゲーション・サービスでは、ナビタイムジャパンとゼンリンのサービスを903iシリーズにプリインストールすることで対応。さらにauにないGPS活用分野として、紛失した携帯電話をGPSで探す「ケータイお探しサービス」や、おサイフケータイと連携する電子クーポン「トルカ」とGPSによる地図検索サービスの連携を実現している。
このように、GPS関連サービスを携帯電話キャリアやコンテンツ・プロバイダーのビジネスで活用する動きは、急速に広がってきている。