[特集]

対談:NGNとFMCを語る(4):NGNは今後どのように展開するのか?

2006/09/05
(火)
SmartGridニューズレター編集部

NGNで注目されるIPv6とSIM

—NGNは、ITU-TでTISPANやIETFなどの協力を得て標準化が推進されていることがわかりましたが、インターネット関連の技術の研究をずっとやってこられた﨑先生からみて、NGNについて、心底どのように思っておられるのでしょうか。

江﨑浩

 NGNがオールIPで実現してくれるなら、これはとてもいいことだと思うのです。つまり、IPベースでそろえられるところが大事なのです。あとは制御のアーキテクチャなど付随していろいろあると思いますが、それらはたぶん収束できると思います。ある意味では、全部ひとつに収束する必要はないでしょうとも思っています。

そうすると、とても大事なこととして、IPアドレスはIPv6が重要な役割を担うような気がします。最初の段階で、つながる者同士がアドレスと識別子の管理がきちんと管理されていることが重要だと思います。

NGNでパケット転送を担うIPベースの「トランスポート部」のIPアドレスが、IPv6によってグローバルに、キャリア間でマネジメントできていれば、多分いろいろ変化するネットワークの相互接続の面からも、担保(保証)できるのではないかと思うのです。

—たしかに、IPv6が本格的に必要な時代になりそうですね。

 あるキャリアの方とお話していたときに、どうしてATMが死んで、IPが勝ったかという話題になりました。そのときの、そのキャリアの方の話の重要なポイントは、「電話番号は電話でしか使えない。ところがIPアドレスはすべてのコンピュータに付いてしまった。」という点でした。 ですから、フットプリント(適用領域・適用範囲の大きさ)がまったく違っていたと。そこが、当時、電話がIPに負けた最大の原因だろうという話をされていましたね。

そうすると、今IP電話がどうしてこれだけ流行しているかというと、電話番号であるE.164番号(用語解説参照)をインターネット上に接続されたIP電話で、すなわち、より大きなフットプリントにおいて利用可能にしているからだろうと考えることができるでしょう。同じナンバリング(番号)基盤でも、つながる(物理)領域がどんどん大きくなってきて(アウトリーチして)いる、ということになるのかなという感じがしているのです。

ですから、例えば極端な話、NGNでも、SIM(Subscriber Identity Module、携帯電話の加入者識別カード)をSTB(セット・トップ・ボックス)に差し込んで使うという話がありますね。これは、SIMの中に入っているID(識別番号)が、グローバルになれる可能性を持っているということじゃないでしょうか。

—NGN時代は、SIMも活躍するのですね

冲中 携帯電話のSIMは、グローバルにユニークなIDを持っています。しかも、お客様には見えないIDなので、電話番号のようなサービスで利用するIDと自由に紐付けできます。

 ですから多分、シグナリング(信号制御)・ネットワークの中でグローバルに、IDの利用が可能になれば、そのIDが勝ち組になると思うのです。 インターネットの側からみると、シグナリングというのは、要はDNS(ドメイン名解決システム)なのです。

つまり、アクセスしたい人(宛先)のIDを教えてくれるというのがシグナリングなのです。だとすると、多分、NGNにおけるシグナリングはDNSのオルタナティブ(代替)のような感じで使用されることは、あり得るだろうと思います。

冲中秀夫

冲中 そうですね。GSMやW-CDMAの携帯電話では、SIMを端末に挿入しないと使えません。ですから、自分の加入する、つまりホーム・ネットワークの中でのアクセスであっても、そのSIMのグローバルIDで動いているのですよ。

SIMのグローバルIDは、IMSI(International Mobile Subscriber Identity、移動機加入者識別番号)といいます。CDMA2000の携帯電話ではSIMを使わない端末がありますが、その場合でもIMSI相当のIDが端末の中に書き込まれているので、原理は一緒です。そのIMSIというIDは、お客様が回す番号とは別物なのですよ。そのIDは、お客様に見せていません。

 要は、IMSIとユーザーが回す電話番号の関係は、インターネットでいうと、URLとIPアドレスみたいなものなのですね。

冲中 近いと思います。ホーム・ネットワークの加入者データベース(HLR: Home Location Registerという)で、お客様が認知しているE.164の電話番号とIMSIを紐付け、携帯電話網の中はIMSIというIDで動かし、自分の網から他の電話網にいくところは、通常のE.164の電話番号で動かしているのです。

 そういう観点で考えれば、NGNも、本質的にはインターネットのアーキテクチャに似ていて、大きなところではほとんど同じ構成なのですね。

冲中 データ系のほうは、電話系と異なり、実はIPアドレスを振っていましてね。例えばKDDI(au)の場合では、端末にIPアドレスと電話番号を付与し、1対1に結び付けています。

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