[特集]

対談:電波・周波数を語る(3):WiMAX、802.20、iBurst、次世代PHSの無線ブロードバンド技術

2006/11/22
(水)
SmartGridニューズレター編集部

2.5GHz帯に95MHz幅を割り当て

—このような新しい4つのワイヤレス・ブロードバンドに対して、総務省は、周波数をどのように割り当てる方針なのでしょうか?

河内 ワイヤレス・ブロードバンドについては、総務省の「ワイヤレスブロードバンド推進研究会 」で幅広く検討し、2005年12月に報告を出しました。その中では、ワイヤレス・ブロードバンド・システムの使われ方をひとつに限定すべきではなく、移動系や固定系など、さまざまな使われ方を可能とするようにすべき、ということになりました。

※ワイヤレスブロードバンド推進研究会 最終報告書(PDF)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/pdf/051227_1_4.pdf

—具体的には2.5GHz帯を利用すると聞きましたが?

河内正孝氏

河内 周波数については、2.5GHz帯を割り当てるということを念頭にして、2006年12月に情報通信審議会から答申が出されています。その審議の過程では、各システムの提案を出していただいたのですが、先ほどの4つの方式の提案があって、それらの方式についての検討が行われました。その結果、4つとも必要な技術的条件を満足することがわかり、それぞれについての技術基準が規定されています。

具体的な周波数帯としては、当初、2535~2605MHzまでの70MHz幅が考えられていました。そして、その隣には準天頂衛星(※3)による放送・通信サービスのための周波数が25MHz幅(2605~2630MHz)あります。しかし、ここの25MHzについては、使われなくなったのです。

—使われないというのは、どのような意味でしょうか?

河内 準天頂衛星の計画自身は継続して進められているのですが、その中の放送・通信サービスの部分については、民間の事業者がサービスの実施を断念し、準天頂衛星は測位を中心に利用していくことになりました。このため、当初の70MHz幅に、この結果得られた25MHz幅を加えて95MHz幅が、新しいワイヤレス・ブロードバンド向け周波数帯として、検討対象となったのです。

ただ、95MHz幅といっても、これを複数のワイヤレス・ブロードバンド・システムが利用する場合、お互いの間の干渉や、他のシステムへの妨害が発生しないように、システム間にガードバンド(緩衝帯域)を設定しなくてはならず、これをまるまる使えるわけではありません。

他のシステムとしては、例えば、2535MHzの下隣の周波数2500~2535MHzは、移動衛星通信システム「Nスター」が使用しており、一方、2630MHzの上隣の2630~2655MHzは、「モバイル放送(モバHO!)」が使用していますので、それぞれガードバンドが必要になります。そこで、できるだけガードバンドは減らし、周波数を有効活用する方向で、技術的にぎりぎりの検討を進めています。

用語解説

※3 準天頂衛星
常に日本列島の真上(これを「天頂」という)に近い位置に配置され、ビルなどの陰になって通信が影響を受けないようにする衛星のこと。これは1機の衛星が常に日本の真上にいるということではなく、3機の衛星が8時間ごとに真上にくるような仕組みとなっているため「準」と言う言葉が付けられている。

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