95MHz幅では6システムが限界か?
—なるほど。服部先生、この95MHz幅の周波数帯域では、ガードバンドを考慮すると、何システムのワイヤレス・ブロードバンド・システムが使えるのでしょうか?
服部 そうですね。システムにもよりますが、1つのシステムで最低10MHz幅は必要となります。ですから、他システムとのガードバンドを考慮しますと、95MHz幅で当面利用できる帯域幅は70MHzです。したがって、6〜7つのシステムが可能かどうかということになります。異なるシステムや、同一でも非同期となると収容可能な数はさらに減ります。
ただ、いろいろなシステム(方式)が乱立するのは望ましくありませんし、結局、広く普及しなくなってしまいます。また、システムが同じ(類似の方式)の場合は、ガードバンドが少なくて済む傾向があるからです。
例えば、携帯電話がこれだけ広がるようになった理由のひとつは、第3世代(3G)で、CDMAという技術をベースにFDD方式を用いた類似のシステムとして、W-CDMAやCDMA2000という方式を世界標準方式にしたからなのです。
すべて一本化するというのは難しいと思いますが、少なくとも、ある程度、方式を絞り込むことは重要なのです。そういう意味で現在、ワイヤレス・ブロードバンド・システムでは4つの方式が検討され、絞り込まれてきましたが、最終的にはもう少し絞り込んでいくことが必要だと思います。
ただ、技術の面から見ますと、これらのワイヤレス・ブロードバンド・システムでは、今までは無線LANでは使われていたOFDMやOFDMAという新しい変調技術や、スマートアンテナによるSDMA(空間分割多元接続)などの技術をさらに発展させ、高速移動通信系に適用していくという、ひとつの技術の可能性を拓くという点で期待が持てますね。携帯電話では本格的な利用にはまだ至っていません。
—これから携帯電話などにも利用されるのですか?
服部 現在、それらの新しい技術を用いて、現在の0.5〜0.8bit/sec/Hzを、少なくとも3倍~5倍(5bit/sec/Hz)くらい高めていくことが可能です。これらの技術は、実はスーパー3Gあるいは第4世代(4G)、の中でも検討しているターゲットです。しかし、ワイヤレス・ブロードバンドでは、それをもう少し先取りしてシステムを実現するわけですから、大いに注目されるところなのです。
これによって、コストが安くなり(携帯電話はまだコストが高い)、しかもIP化も実現するという魅力もあります。しかし、あまりいろいろなシステムが出てくると、お互いのビジネスにとってもよくないのではないかと思います。