2つの研究所と2つの標準化団体
—YRPユビキタス・ネットワーキング研究所について、また、同研究所とT-Engineフォーラムなど関連する組織との関係をお話しいただけますか
越塚 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、第3セクターによる民間会社である横須賀テレコムリサーチパーク内に設立された研究所です。
一方、T-EngineフォーラムやユビキタスIDセンターは、直接研究開発を行う組織ではありません。T-Engineフォーラムでは、会員組織が開発した技術などを持ち寄って、標準化や共同プロモーションを行うほか、インフラ部分のシステムの共同運営などを行います。
ユビキタスIDセンターは、T-Engineフォーラム内に設立された組織で、「モノ」や「場所」を自動認識するための基盤技術の確立と普及、さらに最終的にはユビキタス・コンピューティングの実現を目標に活動しています。すると、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所はT-Engineフォーラムの一会員ということになります。
![越塚登氏](/sites/default/files/images/061211/RFID005_03.jpg)
さらに違いを挙げるとすれば、対象分野です。T-EngineフォーラムやユビキタスIDセンターは、その設立目的からして、T-EngineやユビキタスIDを対象分野としていますが、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所では、T-EngineやユビキタスID以外の研究もすることがあります。
また、坂村教授が提唱するTRONという視点で見れば、トロン協会もあります。したがって、標準化というレイヤに関しては、トロン協会とT-Engineフォーラムがあることになります。そして、研究のレイヤに関しては、東京大学大学院の坂村研究室とYRPユビキタス・ネットワーキング研究所があるということになります。
研究者の立場としては、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所と東京大学とで、扱うテーマが異なっています。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所では、例えば数年先程度の視野のテーマを扱いますが、東京大学では、例えば20年先など、より長いスパンを視野に入れたテーマを扱います。
しかし、比較的短期のテーマを扱うといっても、通常の民間企業に比べれば長いかもしれません。また、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所で行う研究は、実用化を前提にしていますが、東京大学で行う研究は、必ずしも実用化を前提としたものだけではありません。
TRONの文字コードは最大150万字まで区別できるということで、TRON文字収録センター を運営して、文字の登録と文字コードの割り当てを行っていますが、このようなプロジェクトは、東京大学が適しています。収録した文字を使用して、古文書のデータベース化などを行う予定ですが、文字収録を含めて東京大学の範疇だと考えています。あとは、教育に関連する研究も、東京大学が得意です。