[技術動向]

RFIDの基礎と最新動向(6):YRPユビキタス・ネットワーキング研究所訪問レポート

2006/12/14
(木)
SmartGridニューズレター編集部

UWB Dice-世界最小のUWB通信機

—YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が行った研究のうち、RFIDに関連する最近の成果を教えていただけますか

越塚登氏

越塚 最近の成果というと、UWB(※2)を使ったアクティブ型タグの「UWB Dice」(仮称)です。1cm角の立方体で、UWBを使用する通信機としては、世界最小のサイズです。また、消費電力も小さく、最長で約9年の連続動作が可能です。

RFIDというと、電源を内蔵しないパッシブ型タグが注目されていますが、流通システムでの利用を前提とし、通信可能距離の長さや読み取りの確実性を重視すると、アクティブ型は非常に有効です。パッシブ型に比べると高価なので使い回しをする必要がありますが、他のアクティブ型タグに比べて消費電力もサイズも小さくできます。

アクティブ型タグの場合、300MHz帯や433MHzの製品が多くありますが、それらとはまったく異なる周波数帯を使用し、位置を計測することも可能になっています。

—現在の開発状況はいかがですか

越塚 基本的な部分は、ほぼ完成しています。ただし、UWBについては、日本では現在のところ電波法で定められていないため、特別に許可を受けた場合以外は利用できません。また、使用条件も決まっていません。この法制度に関することは、最大かつ緊急に解決の必要な課題です。

また、UWBの標準化にあたっては、IEEE 802.15.3a(※2006年1月に解散)へ出かけて行って、我々の方針を提案し、一部採用されてもいます。日本の家電メーカーなどは、UWBの通信速度に注目してワイヤレスUSBのような使い方に興味があるようですが、UWB Diceでの利用は、それと違う方向になります。あとは、UWB Dice本体ではありませんが、基地局を小さくするという課題もあります。

—UWB Diceの用途として具体的なイメージはありますか

越塚 アクティブ型タグの場合も、小さくなるほど、いろいろな用途に使えるようになります。現在考えているのは、流通、環境計測、建築物などの管理などです。建築物などの管理では、例えば、街路灯や橋などにUWB Diceを取り付けて、街路灯の電球が切れた、街路灯が倒れた、橋が壊れたなどの情報を取得することを考えています。

用語解説

※2 UWB:Ultra Wide Band
超広帯域無線(IEEE 802.15.3a)。従来の通信に比べて広い範囲の周波数を使用する無線通信で、(1)妨害に強い、(2)消費電力が小さい、(3)高速通信が可能、 (3)高い精度の位置検出が可能といった特長がある。本サイトの連載記事「活発化する電波/周波数の割り当て」の第1回 を参照。

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