[技術動向]

RFIDの基礎と最新動向(6):YRPユビキタス・ネットワーキング研究所訪問レポート

2006/12/14
(木)
SmartGridニューズレター編集部

ITUへNetworked-ID(NID)の標準化を提案

—標準化に関して、UWB以外の活動はされていますか

越塚登氏

越塚 最近、ITUに対して積極的な働きかけを行っています。RFIDという視点では、ISOが標準化の主体です。ユビキタスIDセンターが行っている、RFIDなどからIDを受け取って、そのIDに対応するネットワーク・アドレスを返すというサービスは、ネットワーク・サービスそのものです。そうするとISOだけでなく、ITU、あるいはインターネットならIETFも標準化の主体として加わってくるのではないかと思います。

ユビキタスIDのアーキテクチャでは、RFIDのタグやリーダーなど物理層の部分では、既存のISOの標準などもフルに活用しており、ネットワーク・プロトコルの部分がユビキタスID特有の仕様になっています。そこで、こうした技術をITUへ提案することにしました。

これまでITUの中には、RFIDやユビキタス技術を取り扱う枠組みがありませんでした。そこで、その枠組みを作るところから日本が貢献できると考えています。これは、我々も考えていたことですが、RFIDの裏側にあるネットワーク・システムにとって、IDの媒体がRFIDタグである必要はありません。バーコードや2次元バーコード、アクティブ型のタグなども使えます。そこで、ITUの新しい枠組みは、これらを包括して、Networked-ID、略してNIDと呼ばれています。

NIDは、2005年7月から2006年7月までの調査期間に引き続き、現在は、具体的な標準化を進める段階になっており、我々は継続して提案を行っています(編注:2006年7月、ITU-Tの中にJCA-NIDが設立され活動を開始している)

取材を終えて

ID体系は共存へ

これまでの連載でも少しずつ取り上げてきましたが、ID体系の標準化は、すでに始まっています。今回のインタビューで、ID体系の標準化についてのお話を聞くことができたのは、貴重でした。

EPCとucode、さらに独自コードの3種類が混在する環境での実証実験が、経済産業省の主導で進められています。11月22~23日に開催された慶應義塾大学SFC研究所が主催するオープンリサーチフォーラム(ORF)で、来場者の協力によって最初の実証実験が行われ、12月5~7日に開催されたTRONSHOW2007で、第2回目の実証実験が行われました。

ORFでは、この実証実験に関連してセッションが行われましたが、3種類のコードが混在する環境でも問題なく動作しているという報告がありました。また、TRONSHOW2007でも、この実証実験に関連してセッションが設けられますが、予約開始後すぐに満席になったということです。

EPCとucodeは、RFIDのためのID体系ということで、ライバルであるかのように扱われることもありますが、それぞれ生い立ちが異なり、目指すところも同じではありません。そのような点でも、両方のID体系が共存する方向で検討が進められていることに、RFIDの健全な発展が予感されます。実証実験の結果は、2007年3月に発表される予定なので、この連載でも何らかの形で取り上げたいと考えています。

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