電脳コンクリートが可能にする
コンクリート製品や建築物のトレーサビリティ
建築物や構造物で使用されるコンクリートは、セメント、砂利、砂、水を混ぜて作られますが、練り混ぜを行ってからある程度の時間が経過した後に、コンクリート本来の強度を発揮します。
このため、建築物などにコンクリートを使用するときは、供試体(きょうしたい、写真6)と呼ばれるコンクリートのサンプルを作成し、28日後に目標としている強度が得られているかを確認します。しかしこれまで、大量に作成される供試体の記録は、人手で行っていました。
住友大阪セメントは、この供試体にYRPユビキタス・ネットワーキング研究所のRFIDタグを入れて固めることで、RFIDによる管理を可能としました。これが「電脳コンクリート」で、供試体の強度に影響がなく、読み取りにあたって支障のない位置にRFIDタグが入っているのがポイントです。
供試体にRFIDタグを入れて固めることで、供試体の強度だけでなく、品質、製造方法、生産年月日なども容易に確認できるようになり、「コンクリート製品トレーサビリティシステム」を構築できます。
また、ビルやマンションの建築に使用されるICTコンクリートパネルの銘板(写真7)にRFIDタグを入れておくことで、コンクリートの品質管理だけでなく、建築物についての情報を管理することも可能になり、「建築物トレーサビリティシステム」を構築することも可能になります。
例えば、ある建物の設計者や施工者などの情報を知りたいというときには、その建物の銘板をRFIDリーダーでスキャンすると、その建物についての情報を知ることができるようになるのです。さらに、街中の構造物で使われることになる電脳コンクリートは、自律移動支援プロジェクトを構築するための技術の1つである、場所を示すタグとして利用することも考えられます。
マルチコード相互運用プロジェクト
3種類のコード体系が混在する環境下での実験
本連載の第6回でも取り上げましたが、慶應義塾大学SFC研究所のオープンリサーチフォーラム(ORF)でも行われた、ucodeとEPC、独自コードの3種類が混在する環境での実証実験が、TRONSHOWでも行われました。
TRONSHOWの入場チケット(写真8)には、あらかじめucode、EPC、独自コードのいずれかが登録されており、来場者は、実証実験に参加する意志があれば、展示会場の入口近くにある登録端末で参加受付を行います。
このあと、会場内の各場所に設置された「マルチコード相互運用プロジェクト」実験端末(写真9)に入場チケットをかざすのですが、どのコード体系のチケットを使っても、実験端末から同じサービスが受けられます。例えばすべての実験端末をまわり、アンケート機能のある端末で入場チケットをかざすと、アンケートに答えられ、景品の抽選へのエントリーが行えます。
また、携帯電話のメールアドレスを入場登録時に登録していれば、入場チケットをかざした実験端末の設置されたブースの情報が、携帯電話宛にメールで送信されます。さらに、この実証実験を受託している日本ユニシスのブースでは、入場チケットをかざした人が、入場登録時に登録してある業種ごとに実験端末の単位で集計され、それぞれの展示会エリア(実験端末の近く)に何人いるかがリアルタイムで表示されていました。