[標準化動向]

802.1/802.3の標準化動向(6):広域イーサネット向け802.1ah PBB標準とPBB-TEの動向

2007/02/07
(水)
SmartGridニューズレター編集部

IEEE 802.1ahの標準化進展とPBB-TE方式

IEEE 802.1ahは、現在ドラフト3.3がリリースされており、802.1 WG内の投票に掛けられている。標準化完了は2007年9月の予定である。いまだ802.1ah規格の標準化が完成しない状況であるが、すでに802.1ahの応用となる新しい方式の提案が行われている。それが「PBB-TE(Traffic Engineering)」である。

PBB-TEはノーテル社より提案された方式であり、一般的には「PBT(Provider Backbone Transport)」として知られている。PBB-TEは、802.1ahで規定されたPBB網上に、ポイント・ツー・ポイントの中継経路を構成する方式である。

PBB-TEは、通常のMACアドレス学習による中継判定を行わずに、B-VLANと宛先B-MACアドレスの組み合わせごとに、MPLSのパスのようなポイント・ツー・ポイントの経路[これを「Traffic Engineered Path(トラフィックが制御された経路)」と呼ぶ]を形成し、この経路間にMAC-in-MACフレーム化されたユーザー・データを中継させるものである。

B-VLAN(12ビット)とB-MACアドレス(48ビット)の組み合わせにより経路を定義するため、ほぼ無限の経路を形成することが可能となる[さらに各経路に対してI-SID(24ビット)のユーザー・トラフィックを多重することが可能]。また、同じエッジ・スイッチ間の中継でも、B-VLANの値を変えることにより、異なる経路を通すことが可能となり、いわゆる「Fast Reroute(高速経路切換え)」のような障害切換えなども実現できるものと期待されている(図8)

図8 PBB-TEの概要
図8 PBB-TEの概要(クリックで拡大)

PBB-TEは、B-VLANを分けることにより、802.1ah PBBのポイント・ツー・マルチポイント網にオーバーレイ(多重)することが可能であり、1つのPBB網でポイント・ツー・マルチポイントと、(多回線かつトラフィック・エンジニアリングに基づく)ポイント・ツー・ポイントの接続サービスの両方を実現することが可能となる。

すでにイギリスのBT(ブリティッシュ・テレコム)が低コストでMPLS的な機能を提供する方式として支持を表明するなど、多くの通信事業者が関心を寄せている。PBB-TEは、現在PAR(Project Authorization Request、プロジェクト承認依頼)を審議中であり、2007年3月から正式な標準化が開始される予定である。

参考文献

1) “IEEE P802.1ah/D3.3 Draft Standard for Local and Metropolitan Area Networks— Virtual Bridged Local Area Networks— Amendment 6: Provider Backbone Bridges”, 2006/12/13
2) “Backbone Provider Bridging Networks”, Paul Bottorff et.al, 2004/10/4, http://www.ieee802.org/1/files/public/docs2004/
BB%20Provider%20Bridging%20V9.pdf

3) “Provider Backbone Transport Overview”, Paul Bottorff and David Allan, 2006/11/26, http://www.ieee802.org/1/files/public/docs2006/
new-bottorff-pbt-overview-1006-01.pdf

4) “Cisco Tracks PBT Standards Process”, LightReading, 2006/12/14, http://www.lightreading.com/document.asp?doc_id=112918

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