≪1≫日本市場に必須のNGN関連技術の搭載を
海外メーカーに働きかけていく
株式会社東陽テクニカは、各種測定器を扱う輸入販売主体の専門商社として知られる。ネットワーク系の測定器では米国Spirent Communications, Inc.(スパイレント・コミュニケーションズ社)の製品を数多く手がけており、売れ筋の製品にはネットワーク機器やネットワークに負荷をかけるマルチポート・ネットワークデバイステスタ「SmartBits」などがある。

写真1 徳道宏昭氏(株式会社東陽テクニカ・情報通信システム営業部・セールスマネージャ)
専門商社として、東陽テクニカは世界各国のNGN対応製品を国内に持ち込むだけでなく、日本市場のNGNに対するニーズを海外メーカーにフィードバックする役割も果たしている。と言うのも、NGNまたはIMS(IP Multimedia Subsystem)に対する具体的な対応の進行状況は、国や地域によって異なるからだ。例えば、日本市場ではNGNが話題になる前からIPv6のサービスが始まっている。そうした「日本市場では必須のNGN関連技術」を搭載してくれるようにと、東陽テクニカは海外メーカーに働きかけているわけだ。

写真2 山路洋史氏(株式会社東陽テクニカ・情報通信システム営業部)
日本のNGN向けに同社が特に力を入れているのは、VoIP/IMSプロトコルテスタ「Spirent Protocol Tester」とリアルタイムIPパフォーマンス測定テスタ「Spirent TestCenter」の2製品だ。Spirent Protocol Testerは新しくサービスを開始するプロトコルの動作をテストするためのソフトウェアで、ソフトウェア単体とアプライアンスの二つの形態で販売される。おもなターゲットとするユーザーは、開発者だ。一方、Spirent TestCenterはサービスを想定した負荷テストや品質測定をするための装置で、おもなユーザーとしては通信事業者や大手ベンダーが想定されている。
≪2≫プロトコルのテストをソフトウェア方式で行う
Spirent Protocol Tester
プロトコルテストを専門とするSpirent Protocol Testerは、当初、VoIP専用テスタとして開発されたソフトウェアである。その後、SIP全般に対応したことを足掛かりにIMSへの対応を果たし、NGN用のテスタとしても使えるようになった。
製品の実体はトラフィックジェネレータである「SPTサーバ」とコントローラである「SPTクライアント」から成るソフトウェアとなっており、ソフトウェア単体版(最大50コール対応)とアプライアンス版(最大6,000コール対応)の2形態で販売されている。SPTサーバがLinux、SPTクライアントがWindows 上でそれぞれ動作する。1台のPCで両方を使う場合は、仮想化ソフトウェアとしてVMwareを基盤に利用することが可能だ。
Spirent Protocol Testerでのプロトコルテストは、SPTクライアントで作成したテストケースをSPTサーバのPC/アプライアンス(SPTクライアントと同一PCでも可)にダウンロードし、PC/アプライアンスからケーブルをテスト対象のネットワーク/機器に接続して行う (図1) 。生成できるプロトコルは13種類と多く (表1) 、テストケースの設定作業はすべてGUI画面から行えるので操作は容易だ。「シンプルなコールフローはラダーチャートだけで定義できますし、複雑な形態のコールフローの定義用にはアイコンと線で作図する条件分岐ダイアグラムが用意されています」 (画面1) と、山路洋史氏(情報通信システム営業部)は言う。
SPTサーバでは、内部のステートマシンがテストケースを読み取ってパケットを生成していく。時系列での生成パターンは台形波、ノコギリ波、矩形波、秒あたりコール数、ポワソン分布などから選べるので、現実に近いシミュレーションも可能だ。実施できる代表的なテストシナリオにはSIPサーバテスト、SBC/メディアゲートウェイテスト、DHCPサーバテスト、PoC(Push-to-Talk over Cellular:携帯電話ベースの音声チャット)アプリケーションサーバテスト、I-CSCFテスト、PDF(Policy Decision Function)テストなどがあり、その多くは雛型として製品に標準で組み込まれている。
プロトコルテストの結果は、SPTクライアントのリアルタイムモニター画面やCDR(Call-Detail-Records)リスト画面で確認できる。また、実際に行われたシーケンスを条件分岐ダイアグラムにCall Path Viewとして重ねて表示したり、Excelシートやテキストファイルへのレポート出力やWireshark(Ethereal)トレースファイルによるプロトコル翻訳表示も可能だ。
≪3≫ポートごとに32,000ストリームを自動生成、
64,000ストリームを解析するSpirent TestCenter
一方、リアルタイムIPパフォーマンス測定テスタのSpirent TestCenter (写真4) は、シャーシにさまざまな通信モジュールを装着してエミュレーションによる負荷テストを行うハードウェアテスタとなっている。シャーシには搭載可能モジュール数の違いでSPT-2000AからSPT-9000Aまでの3種類があり、通信モジュールはイーサネットモジュールと10GbEモジュール、POSモジュールから選択可能だ。どの通信モジュールもポートごとにFPGA、CPU、メモリーを内蔵していて、各ポートが独立に動作する仕組みになっているので、多数のモジュールを装着している場合でもすべてのエミュレーションが完全に同期した状態で行える。
負荷テストの対象にはコアネットワーク、ミドルエッジネットワーク、アクセスネットワークのいずれも選択できるが、「NGNについては通信事業者がまだ商用サービスを開始していないので、当面はアクセスネットワークでの利用がメインになるものと思われます」と、徳道宏昭氏(情報通信システム営業部・セールスマネージャ)は話す。サポートされているエミュレーションの種類はルーティング、マルチキャスト、アクセス、MPLS、ブリッジ/スイッチエミュレーション、トリプルプレーエミュレーションなど (表2) 。アクセスネットワークにおけるNGN関連の負荷テストでは、STBのエミュレーションを行うIP-TVザッピングテストが多く行われることになるだろう (図2) 。
テスト方法の設定と結果の確認は、すべてGUI画面から行える。大量ストリーム(負荷テストの実行単位)の一括設定をするためにSpirent TestCenterにはホストウィザード(端末アドレスの生成)とトラフィックウィザード(端末アドレスごとにストリームを生成)の2ウィザードが標準で装備されており、負荷生成は1物理ポートあたり最大32,000ストリーム(1000シリーズの通信モジュールでは16,000ストリーム)まで、解析は最大64,000ストリームまでが可能だ。生成にあたっては、ポートベース(ポートごとに負荷量を設定)、レートベース(ストリームブロックごとに負荷量を設定)、プライオリティーベース(ストリームブロックごとの優先度に基づいて負荷生成スケジューラーで再計算して負荷量を設定)の3モードが選択できる。また、GUIで行ったこれらの設定をTclスクリプトにエクスポートしておけば、後日に再テスト、テストの自動化を行うのも容易だ。
解析と出力周りの機能も充実している。ジッター測定機能(MEF10準拠)を使えば前後パケットとの伝送遅延時間の差分を全種類のトラフィックについて知ることができるし、測定値をヒストグラム(度数分布)に振り分ける機能はルータをチューニングする際に重宝する。テスト結果はSpirent TestCenterのデータベースに自動的に格納され、Result Reporterでレポートにしたり、CSVファイルやSQLiteファイルとしてエクスポートしたりできる。