ロスアラモス郡の実証の全体像
〔1〕電力系統とマイクログリッドを連携した効率化された運転を実証
図2にロスアラモス郡におけるマイクログリッド実証システム構成、図3にその実証構造を示す。
図2 ロスアラモス郡におけるマイクログリッド実証システム構成
〔出所 NEDO〕
図3 ロスアラモスの実証構造
〔出所 NEDO〕
同郡のロスアラモス研究所近くの台地状の住宅エリアは、高度2,200メートルの高地にあり、その一画(フィーダー16と言われているフィーダー(1つの配電線系統と同じ意味)で行われている。
この実証対象として、フィーダーに接続される台形の根元の位置に、太陽光発電(PV)が1MW、蓄電池が計1.8MW(=1MWのNAS電池と0.8MWの鉛蓄電池)が設置され、さらに、スマートハウスやμEMS注4などが設置された。このμEMS制御システムによって蓄電池を制御しながら、1,600軒規模のマイクログリッドとみなして運転し、効率的な運転を実証したのが、ロスアラモス郡における実証の特徴である。
なお、ロスアラモス郡の屋外に設置された各実証設備を図4に示す。
図4 ロスアラモス郡の屋外に設置された各実証設備
〔出所 NEDO〕
〔2〕ロスアラモス郡のスマートハウスの実証内容
さらに、図5に示す左上のロスアラモス側が建築したモデル住宅(スマートハウス)の中に、日本メーカー製のHEMSと、屋根置きの太陽光発電、蓄電池、ヒートポンプなどの家庭用システムが設置された。HEMSが、「電力会社からの電気を買うのか」「自分の家の太陽光発電で発生した電気を使うのか」などを判断しながら、1日のエネルギーの使用をコントロールする実証が行われた。
図5 ロスアラモス郡のスマートハウスと各種設備
〔出所 NEDO〕
〔3〕スマートハウスにおける2つの実証実験
ロスアラモス郡ではスマートハウスにおいて、さらに2つの実証実験が行われた。
1つは、「NEC PLC転送遮断装置」では、電力系統で停電が起こった場合に電力会社からの信号を受け、PLC(電力線通信)でスイッチをオフにして、速やかに家庭の電気を系統から切り離して、戸ごとに太陽光発電や蓄電池から電気を供給する独立運転ができる機能が実証された。
もう1つは、1MWの大きな太陽光発電を系統側に設置した場合、太陽光発電の電気を使い切れずに余ってしまうケースが発生する際に、電力会社から信号を送り、住宅側(25kWh)の蓄電池で余剰電力を吸収して蓄電してもらったり、電力供給が不足する場合には、スマートハウス内の電力需要を抑えてもらうなどして電力をコントロールする、自動デマンドレスポンス(ADR)の実験についても行われた。
〔4〕ロスアラモス郡における実証の構造
同エリアのプロジェクトには、東芝、京セラ、日立製作所、日本碍子、NEC、シャープ、CTCのほか、京都大学がデマンドレスポンスでの実証のため参加した。
このデマンドレスポンス実証では、時間帯によって電気料金を変化させて(CCPやPTR)注5、家庭の電力消費をコントロールする実証を、約900軒規模の家庭を対象に行った。
また京セラは、ごみの埋め立て地などの地盤の軟弱地域に、太陽光発電(PV)を建設する場合のノウハウを習得したり、日立製作所は、日本で開発した大型の太陽光用インバータが米国でもきちんと動作することを実証したりするなど、各社独自の抑制の実証も行われた。
さらに京セラとシャープはHEMSの実証、NECはスマートハウスの自立運転等々、多様な実証が行われた。
▼ 注4
μEMS(マイクロEMS):Micro Emergy Management System、系統側のマイクログリッドの制御システム。東芝が開発したスマートグリッドのコア技術の1つ。マイクログリッド内で生じる電力の変動をグリッド内で吸収し、電力系統への影響を小さくする電力需給制御技術。
▼ 注5
CCP(クリティカル・ピーク・プライス):ピーク料金を数倍にして需要を抑える手法、PTR(ピーク・タイム・リベート):ピーク時間の需要抑制に対し報酬を払う手法。