住宅用太陽光発電システムの市場動向
〔1〕注目される「第6次エネルギー基本計画」
日本政府は、2021年4月に開催された気候サミット(主催:米国バイデン大統領、40カ国が参加)で、パリ協定の実現に向けて、2030年の日本のCO2排出目標を、従来の26%から46%(さらに50%削減に挑戦)に引き上げるという、野心的な目標を発表した。
このため、2021年夏に発表が予定されている「第6次エネルギー基本計画」において、エネルギーミックス(さまざまな発電方法を組み合わせて電気をつくること)をどのように実現するのか、注目されている。同基本計画では、太陽光発電システムも重要な位置づけとなっているため、まず住宅用太陽光発電システムの市場動向を見ていく。
〔2〕次世代へと進展する太陽光発電システム
図1に、現在から次世代(2022年4月以降)へと進展する、住宅用太陽光発電システムのイメージを示す。
図1 現在と次世代の太陽光発電システムのイメージ
太陽電池アレイ:太陽電池モジュールを複数枚並べ、直列/並列接続し、屋根に設置したもの(住宅に太陽光発電システムを設置する場合、太陽電池はモジュール単位で販売され設置される)。
接続箱:太陽電池アレイからの直流配線を1本にまとめて、パワーコンディショナーに接続するための装置。
分電盤:電力会社などの商用電力系統からの電気を、建物の1階や2階に分配できるような機能を備えた機器(ボックス)のこと。パワーコンディショナーと商用電力系統との連系点。単に電気を分配するだけでなく、過度に流れた電流を遮断するブレーカーや、漏電遮断器等を内蔵し、火災などを防ぐ機能も備えている。
出所 http://www.jpea.gr.jp/pvj2018/webdownload/SS_2_5.pdf
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/denjihokaisei_04.html
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/keiryo_seido/pdf/001_02_00.pdf
図1に示すように、次世代の住宅用太陽光発電システムでは、
- 電力会社と住宅(家庭)の境界には、従来のように計量法で検定を受けた電力量計(スマートメーター)を使用するが、
- エアコンや冷蔵庫、テレビなどの家電機器、さらに蓄電池や電気自動車(EV)充電器などには、新しい「特定計量制度」(2022年4月1日施行)のもとに、計量法の検定を受けなくても一定基準を満たした電力計(例:コンセント型や機器内蔵型などの小型計量器)を設置できるようにして合理化し、VPP(Virtual Power Plant)ビジネスなどを促進できる環境を整備する。
これにより、後述する図4に示すようなTPO・PPAモデルによって、電力の自家消費量の取引をより容易にできるようにする。さらに、今後予想されるEVを蓄電池としてその充放電量の取引や調整力の取引、P2P取引(電力の発電者と消費者が直接行う新しい電力取引)などのニーズに対応できるようにしていく注2。
〔3〕太陽光発電設備の住宅用と産業用の区分
次に、太陽光発電設備の住宅用と産業用の区分を整理してみる。
太陽光発電設備は、表1に示すように、電気事業法の電圧区分や定格出力によって、住宅用(10kW未満)と産業用(10kW以上)に大きく区分されている。
表1 太陽光発電設備の低圧・高圧・特別高圧の違い(電気事業法等)
※電気事業法第106条の規定に基づく、電気関係報告規則が令和3年(2021年)4月1日の改正に伴い、電気事業法第38条第2項で定める小出力発電設備のうち、10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備、20kW未満の風力発電設備について、事故報告(例:感電事故、電気火災、設備の破損等)の対象に追加された。
出所 各種資料をもとに編集部が作成
また、太陽光発電は、2012年7月1日にスタートした、固定価格買取制度(FIT)開始後、導入量が急速に伸び、太陽光発電協会の資料(PV Outlook 2050)によれば、図2に示すように、2012年度の6.7GW(ギガワット)から2019年度の53.5GWへと急成長してきた(注。太陽光発電や風力発電については設備利用率注3に留意しておくことが重要である)。
図2 日本の太陽光発電の導入状況:累積導入量[2012年度の固定価格買取制度(FIT)開始後、導入量は急速に伸びた]
出所 一般社団法人太陽光発電協会、JPEAビジョン・PV OUTLOOK 2050:感染症の危機を乗越え、あたらしい社会へ「太陽光発電の主力電源化への道筋」、2020年5月18日
さらに太陽光発電協会は、2030年に100GW(AC)、2050年に300GW(AC)へと成長していき、同時に、温室効果ガスの大幅な削減も可能と予測している(図3)。
図3 太陽光発電(PV)の導入量と温暖化ガス削減量の予測(JPEA PV Outlook 2050より)
出所 一般社団法人 太陽光発電協会、「太陽光発電の状況—主力電源化に必要な新規案件開発継続—」調達価格等算定委員会資料、2020年10月30日
▼ 注2
・「第1回 特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」、2020年9月4日、「特定計量制度及び差分計量に係る事業者ニーズについて」、資料3
・資源エネルギー庁「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」、2020年9月4日、資料2