ロスアラモス郡におけるマイクログリッドの運用例
図6に、ロスアラモス郡におけるマイクログリッドの典型的な運用例を示す。
これは、ロスアラモス郡の1,600軒のフィーダー部分の1日分の実際の運転パターン例である。縦軸が電力〔kW。目盛は1000kW(1MW)きざみ〕、横軸が1日の時間となっている。
グラフに示される各色は、表1のような意味となっている。
表1 図6の曲線の内容
図6は、朝を迎えて家庭での電力需要(赤色:F16-18total demand)が増大し、電力の消費が起点の計画値を越えると、NaS電池が充電から放電に移行する。
図6 ロスアラモス郡におけるマイクログリッドの典型的運用例
〔出所 東芝〕
次に、太陽光発電が開始されるとNaS電池は再び充電を行い、夕方、太陽が沈むと放電に転じて、需要をまかなう。
鉛蓄電池は、電圧などの安定化のために、短い時間に「充電」「放電」を切り替えて、電力品質を安定化させている。
アルバカーキ市におけるマイクログリッドの典型的な運用例
〔1〕アルバカーキ市の商用ビル:アパチャーセンタービル
アルバカーキ市では、メサ・デル・ソル(Mesa del Sol)という、空港南側の砂漠のような台地に新しい開発地域がつくられている。そこの一画に上空から見るとM字型の商用ビル「アパチャーセンタービル」がある。これが同市における商業ビルマイクログリッド実験の対象となっている。
図7にアルバカーキ市における実証の構造を、図8にアルバカーキ市の実証設備を示す。
図7 アルバカーキ市における商業地域マイクログリッド実証システムの構成
〔出所 NEDO〕
図8 アルバカーキ市実証の構造
〔出所 NEDO〕
〔2〕米国側のPVによる変動もガスエンジンで吸収・調整
アパチャーセンタービルの右の道路を挟んだ角に、NEDOによって実証設備が設置された。ここには、図9に示すように、三菱重工のガスエンジン発電機、富士電機のリン酸型燃料電池、古河電池/古河電工の鉛蓄電池、シャープ/明電舎のPVなどが設置され、日本のベンダが中心となったシステムを使って商用ビルで必要な電気を発電する仕組みになっている。注6
図9 アルバカーキ市の実証設備
〔出所 NEDO〕
ビルのエネルギーの需給バランスは、清水建設と東京ガスが構築したBEMS(ビルエネルギー管理システム)で行い、マイクログリッド環境で運転する実証を行った。
また、このBEMSは、系統側に設置してある東芝のμEMSとも通信し、最終的には、ビルから離れたニューメキシコの大手電力会社「PNM」が設置した500kWのPVの出力変動をガスエンジンで吸収・調整するというような日米共同実験も行われた。
〔3〕1,600メートルもある高地での実証
そのほか、停電した際などを想定して、このビルが自立(独立)運転する機能の実証を行っている。また、この地域は、高度が1,600メートルもある高地であるが、日本の分散電源がこのような高地で運転したという実績はこれまでほとんどない。アルバカーキ市のような高地では酸素濃度が薄いため、発電出力が80%に落ちてしまう。
また、日本のように液化天然ガス(LNG)ではなく、生の天然ガスを使用しているため、ガスの品質が一定ではなく、各所からくるガスがまじって供給されるため、時間によってガスの品質が変わる、カロリーも変わり、不純物の量も変わる。そのような環境で、このような分散電源を動かすのは日本のメーカーとしては初めての経験である。
▼ 注6
このほか、熱を貯める蓄熱槽なども設置されている。