凸版印刷は2017年4月5日、睡眠状態を解析する機能を持つ「生体センサー」を開発したと発表した。睡眠状態を検知するセンサーはほかにもあるが、いずれも手首に巻くなど、利用者の身に付ける必要がある。凸版印刷が新開発したセンサーはシート型になっており、寝具の下に敷くだけで睡眠に関するデータを得られる。人間にセンサーの存在を意識させることなく、睡眠データを取得できるところが大きな特徴だ。
シート型のセンサーにはフィルム状の圧電素子が仕込んであり、この圧電素子で睡眠中の人間の心拍数、呼吸回数を検知する。このデータを、独自のアルゴリズムで解析することで、眠りの深さを示すデータを得られる。このアルゴリズムは山形大学工学部応用生命システム工学科の新関久一教授の協力を得て開発したものだ。
図 凸版印刷が開発した生体センサー(左)と、ベッドマットレスの下に敷いた様子(右)
出所 凸版印刷
生体センサーはシート状の本体からケーブルが伸びており、その先には小さな箱がある。この箱には、心拍数や呼吸の回数から眠りの深さを独自アルゴリズムで解析する回路と、無線通信機能を担う回路が入っている。このセンサーはまだ開発段階にあるため、どのような無線通信機能を持たせて製品化するかという点は決まっていないという。
そして凸版印刷はこのセンサーの実証実験を2段階に分けて実施する。場所は東京都練馬区の「ねりま健育会病院」。1段階目の実証実験では、センサーが期待通りに働くかどうかを検証する。期間は2017年4月下旬からおよそ1カ月間。センサーを入院患者のベッドに設置し、Bluetoothでデータを発信する。データを受信するのは専用アプリケーションをインストールしたWindows PC。センサーとPCの1対1の通信で、センサーがどのように働くのかを調べる。2段階目は、センサーがBluetoothで発信するデータを何らかの形で受信し、院内の情報システムを経由してサーバーにデータを蓄積することを検討しているという。この実験は2017年5月下旬から約1カ月実施する予定だ。
凸版印刷は、このセンサーが入院患者を支援する看護師の役に立つと考えている。投薬や食事などのために、眠っている入院患者を起こそうとしても、なかなか起きない、起きたとしても機嫌が悪くなるといったことが起きがちだ。そこでこのセンサーを利用して眠りが浅いとき、覚醒に近づいているときに起こすようにすれば、患者もスムーズに目覚めてくれると予測している。また、睡眠データをサーバーに集約してデータの推移を見ることで、医師が投薬量を調節したり、リハビリメニューを変更するといったことも可能になると考えている。
凸版印刷は今回開発した生体センサーを1つおよそ10万円で販売する予定を立てている。介護、看護、高齢者向け住宅などへの導入を進めて、2018年には関連受注額も合わせて2億円程度の売上を目指している。
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凸版印刷