加速する世界のCO2排出量ゼロの動き
日本政府は、地球温暖化対策に向けて2020年10月に、「2050年カーボンニュートラル(CO2排出量ゼロ)」を宣言して以降、2021年11月に英国のグラスゴーで開催されるCOP26を目指して、多くの取り組みを次々と行っている。
この一連の取り組みの起点となった歴史的な「京都議定書」(COP3)から現在までを整理すると表1のようになる。
表1 京都議定書/パリ協定からCOP26に向けたCO2削減目標(NDC)の取り組み
GHG:Greenhouse Gas、室温効果ガス。二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、さらに4ガス〔①ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、②パーフルオロカーボン類(PFCs)、③六フッ化硫黄(SF6)、④三フッ化窒素(NF3)〕の計7種類。日本の場合90%以上が二酸化炭素(CO2)となっている〔図2(2)参照〕
トップダウン方式:先進国のみ排出削減目標を義務化する方式
ボトムアップ方式:各国がNDC(各国のCO2排出目標)を自主的に国連に申告する方式
CN:Carbon Neutral、カーボンニュートラル
IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change、1988年に設立された「気候変動に関する政府間パネル」という国連組織
NDC:Nationally Determined Contribution、国が決定する貢献(約束草案)。パリ協定に基づいて、各国が自主的に決定する温室効果ガス(CO2)の削減目標。その目標を各国が国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ提出する
G7(Group of Seven)サミット参加国:フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ。各国の持ち回りで原則として毎年開催。EU(欧州連合)も正式なメンバーとなっている
市場メカニズム:他国において支援した温室効果ガス(CO2)の削減貢献分を、自国のCO2削減としてカウントする仕組み。COP26でその合意を形成する予定
出所 各種資料をもとに編集部で作成
まず、表1に示すCOP26に向けたCO2削減目標(NDC)の大きな流れを作った、米国主催の気候サミット(日本はNDC46%を宣言)や、G7サミット(先進7カ国首脳会議)を概観していく。その後、日本で次々に発表された成長戦略実行計画や最新版の2050年カーボンニュートラルグリーン成長戦略(以下、最新版グリーン成長戦略)を見ていこう。
温室効果ガスとは?
温室効果ガス(Greenhouse Gas)はGHGと略称される。温室効果ガスは大気圏にあり、地表から放射された赤外線の一部を吸収することで温室効果をもたらす。
温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)のほか、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)、パーフルオロカーボン類(PFC)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)という4ガスを加え、合計7種類のガスがある。
日本の温室効果ガス中で、CO2は全体の90%以上を占めるため、日本では温室効果ガスのことを代表してCO2と呼ぶ場合が多い。本記事でもこれにならっている。
温室効果ガスの排出量の単位は、「百万トンCO2」換算で表される。温室効果ガスにはいろいろな種類のガスがあるので、それぞれを「CO2の重さに換算(CO2相当の重さに換算)」して比較できるようにしている。
各国で相次ぐCO2削減目標の引き上げ
表2は、米国バイデン大統領が主催した気候サミット(オンライン開催。2021年4月22〜23日、40カ国参加)において、主要国が示したCO2削減目標である。世界をリードしているEUに続いて、COP26開催国である英国をはじめ、米国、カナダ、日本などがCO2削減目標の引き上げを表明している。
表2 気候サミットを踏まえた主要国の排出目標(米国、カナダ、日本がCO2削減目標を引き上げ)
出所 資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方」、令和3(2021)年4月28日
日本政府は、2030年度のCO2削減目標を2013年度比で46%削減と、大幅に引き上げ(従来は26%削減目標であった)、50%の高みに向けて挑戦すると宣言した。
続いて、英国のコーンウォールで開催されたG7サミット(2021年6月11〜13日)では、2050年までに共同で、「温室効果ガス排出量のネットゼロ」に取り組むことが宣言された。COP26までに、現在各国が策定している2030年の中期削減目標に続いて、2050年の長期削減目標も提出することが確認された。さらに、再生可能エネルギー(以下、再エネ)などの展開を加速させ、CO2排出量削減対策が行われていない石炭火力発電に対して、政府(参加国)による新規の国際的支援を2021年末までに終了するなど、石炭火力発電に対する厳しい方針についても確認された