東芝は2017年4月17日、東日本旅客鉄道(JR東日本)から受注していた自立型水素エネルギー供給システム「H2One」を納入し、運転を始めたと発表した。納入場所はJR東日本南武線の武蔵溝ノ口駅(川崎市高津)の構内。東芝は今回、太陽光発電設備、蓄電池、水素製造装置、水素貯蔵タンク、純水素燃料電池を納入したという。
図 南武線武蔵溝ノ口駅構内に設置した「H2One」
出所 東芝
JR東日本は、2012年3月からLED照明などの省エネルギー機器や、再生可能エネルギーを活用した発電設備を駅舎に導入する「エコステ」という運動に取り組んでいる。エコステ第1号となったのはJR中央線の四ツ谷駅で、2012年3月からエコステとしての運用が始まった。四ツ谷駅には、太陽光発電システムやLED照明、自然換気システムなどを取り入れたほか、駅舎周辺を緑化し、夏季の気温を下げるなどの工夫を盛り込んだ。2008年度比でCO2排出量40%削減を目標としていたが、2014年度には2008年度比でCO2排出量を41%削減できたという。
エコステ第2号は、東北本線の平泉駅。合計出力78kWの太陽光発電システムと、蓄電容量が240kWhのリチウムイオン蓄電池を導入し、晴天日は駅で消費する電力をすべて自前で賄う「ゼロエミッションステーション」とすることを目指した。2012年3月の使用開始後、1年間で201日間、電力を自前で賄ったという。
JR東日本はその後も、2013年9月には京葉線海浜幕張駅、2015年3月には常磐線湯本駅、2015年4月には東北本線福島駅に再生可能エネルギーを活用した発電設備や、省エネルギー設備を導入し、順次「エコステ」としての運用を開始している。
今回、6番目の「エコステ」となった武蔵溝ノ口駅では、水素の活用に注目した設備を中心に機器を揃えた。駅舎屋上に設置した太陽光発電システムの電力でH2Oneが水素を作り、貯蔵し、必要に応じて燃料電池に供給して発電する。平常時は、水素から発電した電力は駅ホームの照明に利用する。ちなみに駅舎を照らす照明にはLED照明や、自然光を利用した照明など、省エネルギー機器を導入している。また、燃料電池が発電する際に発生する熱は、ホームの待合スペースに設置した「ウォームベンチ」を温めるために使用する。
また、災害時は自立型水素エネルギー供給システムH2Oneが、系統電力に頼ることなく電力を供給する。災害で行き場を失った人たちに駅舎を一時滞在場所として提供するために、発電した電力を駅構内全体に供給する。
東芝は今後もH2Oneをさまざまな用途に向けて提供し、自立型電源、CO2を排出しない電源という特徴を活かした活用を目指すとしている。
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