横浜銀行は2017年4月24日、同社のWebサイトで「相続手続きご案内サービス」の提供を始めたと発表した。音声認識技術と、自然言語処理を駆使して、相続の相談に音声で応えるサービスだ。東芝が提供するクラウドサービス「RECAIUS」を利用して構築した
親族が亡くなった後の相続の手続きは、多様な書類を準備しなければならない複雑なものだ。頻繁に経験する手続きではないため、誰もが複雑な手続きを慣れない中、迷いながら何とか進めているのが現状だ。相続のために遺族が来店するときは、取得する書類の間違いなどが高い確率で発生して、手続完了まで平均で4~5回来店することになるという。今回、横浜銀行が提供を始めたサービスは、複雑で面倒な手続きを遺族に理解してもらい、少ない来店回数で手続きを済ませることを目指したものだ。
サービスを利用するにはまず、Webブラウザで相続手続き案内のページを開く。案内サービスを開くボタンがあるので、クリックするとサービス提供のページに移動する。ここでは仮想的な店員が顧客の質問に応答する。キーボードによるテキスト入力にも対応するが、音声認識技術を採用しているので、マイクに向かって話しかければよい。話しかければ、仮想的な店員も音声で回答する。
図 「相続手続きご案内サービス」の画面イメージ
出所 東芝
東芝は今回の横浜銀行のサービスのために主に「音声認識」「音声合成」「知識処理」の3つの技術を活用したという。音声認識の技術では多量の音声サンプルで認識エンジンを学習させたほか、機械学習で認識精度を向上させたという。音声合成は、応答の音声を返すときに利用する。
知識処理の部分では、自然言語処理の技術を使って、顧客が話しかけてきた内容に応じて適切な応答を生成する。例えば、同じことを意味する言葉でも、人間によって言い回しや使う単語が異なる。例えば親族が「死んだ」ということを意味する表現も、「亡くなった」「他界した」「不幸があった」「永眠した」などいろいろある。今回のサービスでは人によって異なる多様な表現を理解するように工夫したという。そのために、相続の場面で使う言葉を集めて、辞書に収録したという。
さらに相手の発話を解釈して、その意図を理解して先回りする回答を出せるようにも工夫したとしている。簡単な例を挙げると「身内に不幸がありまして……」と話しかければ、「ご愁傷様です、相続のご相談ですね」と返すという具合だ。
実在の店員に手続きを引き継ぐ仕組みも備えている。Webブラウザを通した仮想的な店員相手の相談が一通り終了すると、「受付番号」を発行する。店舗では受付番号ごとにどの程度まで話が進んでいるかを把握できるようになっており、店舗受付でこの受付番号を伝えれば、すぐに手続きを進められる。
東芝は今後、今回の横浜銀行のサービス構築で利用した技術を、より広い範囲で活用する姿勢を見せている。具体的には銀行業務の中でも、相続に限らず、ローン相談や保険相談など、ほかの業務にも応用していきたいとしている。また、顧客が話しかけてきた内容を解釈し、適切な応答を生成する過程に機械学習を取り入れて、さらに顧客にとって便利なサービスを開発していく意向も示している。