日立造船、日本政策投資銀行、デンソー、日本無線、日立オートモティブシステムズの5社は2017年6月14日、センチメートル(cm)級の測位能力が可能にする新サービスを提供する企業「グローバル測位サービス株式会社(英語名:Global Positioning Augmentation Service Corporation)」を共同出資で設立すると発表した。新会社は翌15日には設立する。
cm級の測位能力とは、2010年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた準天頂衛星「みちびき」が可能にするもの。2017年6月1日には2機目の準天頂衛星「みちびき2号」の打ち上げが成功している。日本政府はもう2機打ち上げ、2018年度には4機体制で運営を始めることを目指している。さらに2023年には7機体制で運用する予定となっている。
準天頂衛星は、日本からオーストラリア南岸を8の字を描くような軌道で巡航する。その目的はアメリカが運営している全地球測位システムGPS(Global Positioning System)を補完することにある。アメリカは全世界をカバーするように30以上の人工衛星を打ち上げてGPSを運営しているが、地上でGPSを利用して正確に測位するには少なくとも4機、できれば8機のGPS衛星からの信号を受信する必要がある。
しかし日本では8機のGPS信号を捉えることはほぼ不可能で、6機の信号を捉えるのもやっとという状態だ。日本上空で準天頂衛星が4機体制で稼働を始めれば、GPS衛星4機に加えて準天頂衛星4機の合計8機の信号を捉えることが可能になる。L6信号は「センチメーター級測位補強サービス」の信号。GPSなどの信号だけではm単位の測位しかできないが、L6信号で補強することでcm単位の測位が可能になるのだ。
日本無線は2017年1月に、従来の測位衛星の信号に加えてL6信号まで受信するチップ「JG11」を開発することを明らかにしている。2018年秋のサンプル出荷開始を目指して開発中だ(参考記事)。
図 日本無線が開発中のチップ「JG11」のイメージ。このチップだけでcm級の測位が可能になる
出所 日本無線
最近はカーナビゲーションシステムに限らず、農業や建設業、防災などの分野でも衛星測位を利用することが増えている。近い将来、自動車に限らず農機、建機などの自動運転が実現するようになると、より精度の高い衛星測位システムが不可欠となってくる。
新会社では準天頂衛星の信号を利用した実証実験などを実施して、cm級の測位能力を活用したまったく新しいサービスを開発し、数年以内に事業として提供を始めることを予定している。