Domino's PizzaとFord Motorは2017年8月29日(米国時間)、Ford Motorsが開発した自動運転車の試作車両を利用して、ピザ自動宅配の実験を実施すると発表した。実験は、Domino's Pizzaの本社があるミシガン州アナーバー(Ann Arbor)で、数週間実施する。この期間にアナーバーでピザを注文した顧客をランダムに選び、選んだ顧客に対して自動運転車による配送を希望するかどうかを確かめる。希望すると回答した顧客に限って、自動運転車を使ってピザを配送する。また、自動運転車による配送を希望した顧客は、Domino's Pizzaが無償で配布しているスマートフォン向けアプリケーションで、自身が注文したピザを載せた車両がどこにいるのか地図上で確認できる。
実験に使う車両は、Ford Motorsのハイブリッドカー「Ford Fusion Hybrid」を基に、自動運転機能を搭載した試作車だ。ピザの配送に使うために右後部座席を改造し、ピザを加熱する機能をもつ格納スペースを設置した。今回の実験では、自動運転の配送車に研究者と、非常時の運転を担当する運転手が同乗する。
図 Domino's Pizzaの店員が、自動運転車の右後部座席にあるピザ格納スペースに注文のピザを入れているところ
出所 Ford Motors
さらに右後部座席の外側には、ピザを受け取る時に顧客が操作するタブレットを取り付けてある。車両が到着したら、顧客はタブレットを操作して、暗証番号を入力すると、後部座席の窓が開き、ピザを取り出せる。
図 顧客が右後部座席外にあるタブレットに暗証番号を入力すると、窓が開いてピザを取り出せる
出所 Ford Motors
Domino's Pizzaのアメリカ支社の社長を務めるRussell Weiner氏は、自動運転車で配送することによる業務効率向上よりも、顧客が抱く感情を気にしているようだ。今回の実験について「ピザを載せた車両が到着した時に、顧客がいちいち家の外に出て、ピザを取りに行くことについてどう思うのかを確かめたい」と語っている。
そして、ピザを取り出す方法についても「顧客に提供するサービスはシンプルで、直感的に理解できるものでなければならない」とし、「自動運転の配送車が、顧客が希望する場所の反対側の車線の路肩に停車したら、顧客が抱く感想はまったく違うものになるということも理解しておかなければならない」と釘を差している。しかし同氏は「Domino's Pizzaが完全な自動運転車両を使った配送を実現するために調査や研究を続けていることは確かだ。最終的な目標は、利用する顧客が違和感を抱くことなく、自然に利用できるサービスを提供することだ」と、同社が掲げる高い目標について語った。そのレベルのサービスを実現するには、まだまだ研究開発が必要になるだろう。
Ford Motorsも、今回の実験では自動配送車に対する顧客の反応を気にしているようだ。Ford Motorsは、数々の企業の協力を得て、利用者に自動運転車を好意的に受け止めてもらい、利用して良かったと思ってもらうにはどうすべきかを探る研究を続けている。今回のDomino's Pizzaとの実験はその一環だ。
Ford Motorsで、自動運転技術と電気自動車を担当する副社長であるSherif Marakby氏は、「Domino's Pizzaは、顧客に気持ち良く食事をしてもらうことを何よりも意識している。今回の実験でDomino's Pizzaの顧客が自動配送車にどう反応するかということはFord Motorsにとっても貴重なデータとなるだろう」としている。
Ford Motorsは2021年に完全自動運転車の発売を予定しているが、その時に登場する車両は、利用する企業とその顧客の両方の要望を満たすものにするとしている。