Microsoftは2017年10月24日(アメリカ東海岸時間)、シアトルに「Advanced Energy Lab(先端エネルギー研究所)」を開設した。設計建設業者のMcKinstry社が建物の設計と建築を担当し、データセンター向けの発電機を開発販売しているCummins社は建設資金を支援した。この研究所には20のラックで構成するデータセンター設備を設置しており、この設備で新しい形のデータセンターの開発に向けて試験を始める予定だ。
図 Microsoftが新たに開設した「Advanced Energy Lab」の内部。サーバーなどを詰め込んだラックが並んでいる
出所 Microsoft
この研究所でMicrosoftはラックのすぐそばに燃料電池を設置し、その電力でサーバーなどの機器を動かすデータセンターの可能性を検証する。Microsoftは2014年10月、ワイオミング州シャイアン市に燃料電池の電力で運営するデータセンターを建設しているが、このときはアメリカFuelCell Energy社の大規模燃料電池で発電し、データセンターのそれぞれの機器に電力を供給する形を採っていた。今回は電力を発生させる燃料電池までデータセンター内部に組み込み、送電による損失を少しでも抑えることを狙う。
Microsoftはデータセンターでの燃料電池の応用について研究を続ける理由として、既存の商用電源の効率の悪さを挙げている。商用電源では、遠く離れた発電所で発電した電力を、長い送電線で利用者まで届ける。その間にいくつもの変電所を経由する。これだけでも相当な電力を損失している。さらにデータセンター内では、供給を受けた電力を交流から直流に変換し、電圧を下げて、ようやくサーバーなどで使える電力となる。
そして、長い送電線と途上にある変電所などは、故障の原因にもなると指摘している。どこかでトラブルが発生すれば、電力供給が止まる可能性もある。データセンターではその可能性に備えて、自家発電装置やUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)を用意しなければならない。これはデータセンター建設にかかるコストを押し上げている。
図 一般的なデータセンターが電力を調達するルート(上)と、Microsoftが今回検証するデータセンターにおける電力供給路(下)
出所 Microsoft
Microsoftが今回検証する、データセンター内に組み込んだ燃料電池で電源を確保する方法なら、送電経路の電力損失やトラブルを心配する必要はない。停電に備えて自家発電装置やUPSを用意する必要もない。用意した試験用設備では、当初は天然ガスで発電するが、ワイオミング州のデータセンターでは汚水処理施設で発生したバイオガスで発電している。今後バイオガスでの発電も検証する可能性は高いと言える。試験の結果を検証し、可能ならばMicrosoftが運営するデータセンターにこの手法を導入していく予定だとしている。
そして今回開設したAdvanced Energy Labでは今後、データセンターで消費するエネルギーについてさまざまな角度から研究を進めるとしている。